その後は訳も分からず腕を引かれ、奴、イヴェールの赴くままに連れて行かれた。何故か頭からドナドナが離れない。どうしよう俺、売られちゃうのかな。なんて適当なこと考えて気を紛らわしてみても、イヴェールの強引な行動は変わらずに、むしろ先ほどから打って変わって無口になってしまった文恐怖を煽られる。

武道場から外廊下を通って校舎の中へ。昨日とは打って廊下は人気が多く、通り過ぎる奇妙な二人連れに「えっ」と振り返るし、教師なんかは口を開けて走ってはいないものの妙に早足の生徒を注意しようとする。その度イヴェールはにっこり笑って見事に障害物を撃退した。俺も釣られてにっこり笑ってた。にこにこ笑いながらお手手つないで早足で過ぎ去っていく二人組。気分は珍道中、明日からこそこそ囁かれるであろう噂を思うと目じりから液体が滲んでくる気がする。誰かとすれ違うたび、先ほどのエレフの「……お幸せに」が幻聴で再現されて、俺は頭を抱えたくなった。



正気を取り戻した時には、もうイヴェールを止められるどころの話じゃなくて、教室に置いてきたはずの鞄は手元にあるし、靴もいつの間にか履き替えてとっくに正面玄関を越えていた。むしろ奴の家の中で堂々とリビングのソファに座っていた。どうしてこうなったの、だれか説明してください。「さっきまでエレフと話していた筈なのに、気が付けばイヴェールの家で、彼に途中のマフラーの始末の仕方を教えていた」。以上である。











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