「確実に一か月前よりは痩せてるんじゃねぇか?」

近くに合った防具の面を、えも言われぬスピードで俺の頭にはめ込み紐を締める。そして喉元を守るつきの部分を掴んでがっくがっく前後にゆすった。

「うわ、ちょっくさ、臭い!気持ち悪っ!!」
「はは、歴戦の猛者達のしょっぱい努力が染みついてるんだ、臭いのはむしろ勲章だ。面下もないし」
「勲章じゃ……っ」
「……ローランサン?」

ぐっと本当に吐き気が込み上げてきて、俺は抵抗をやめて喉元を抑え込んだ。そのポーズにエレフが気づいてやっと手を止める。そしてちょっと待ってろと言って立ち上がった。

その間に緩く後ろで結ばれた紐をほどいて面を外す。暖房が利いていてもわっとしている筈の武道場の空気が、も新鮮であるような解放感に、少しだけ胸の悪寒が晴れた。よくエレフもこの閉塞感溢れる防具をつけてすばしっこく動き回れるものだ。ぐわんと回っているような視界の中呑気にそんなことを考えていると、戻ってきた男は俺の頭にタオルを被せ持参していたスポーツ飲料を手渡してくれた。

一言ありがとうと言ったつもりで口を開いたが、掠れてて音にはならなかったかもしれない。ひとまずキャップを開けて冷たいそれを喉に通し、甲斐甲斐しく背中を撫でるリズムを少しの間目を瞑って聞いていると、胸元に競りあがった吐き気は徐々に治まっていった。

「悪かった」

米神を掻きながらすまさなそうに謝ったエレフに、俺も緩く手を振って応えた。むしろ突然こうなって迷惑かけて、こちらが謝りたい。











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