翌日の放課後、部活動のピークである夕方も気配の遠い時間帯、俺は校舎に隣接された武道場の窓を占領して二本目のマフラーに挑んでいた。窓といっても直接外と行き来できるので、占められているステンレスだかとりあえず鉄っぽい素材で出来ている扉が冷たい。

「最近ガクッと肉落ちてね?」

マフラー講座の生徒は何故か二三人増えていた。その内の一人のこの男、夜はバイトがあるからと言って部活の合間にせっせと手元を動かしている。折角の放課後にここまで俺を拉致った犯人曰く、早くマフラーを完成させたいかららしい。何で?と聞くと「ミーシャが、クリスマスプレゼントは手編みのマフラーが良いと思うのって」だと。女子も怖いがシスコンも十分恐怖対象だった。それほどに頬を染めてぽつりと呟いたイケメンは破壊力がある。どれくらいかというと、慰謝料を求めても問題ないレベルだ。

「肉?俺給食とってないから肉の量とか知らないんだけど」
「給食じゃなくてこれだ、この肉」
「はぁ、ってやめろ痛い痛い痛い!」
「言う程痛くないだろー」

ニヤニヤしながら編み棒で俺の頬を突いてくるエレフに、脇にどけてあった教科書の角で攻撃すると悪戯は渋々止まった。確かに中途半端な優しさなのか突いていた方は持ち手だったけれど、地味に痛いんだよ地味に。角の直撃を避けたせいで乱れた髪をぞんざいに直し、エレフはけどさ、と尚も呟いた。ていうか直したせいで余計雑になっているが、本人曰くこれで良いそうだ。余談だが以前理由を聞いたら、全くしょうがないんだからって言いながらミーシャが以下略をドヤ顔で説明をしてくれたので、あっそうと説明の大半を聞き流しておいた。全くしょうがない揺るぎないシスコンである。イヴェールにも目に入れても痛くない妹がいるが、流石にここまでではない(と思いたい)。











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