太陽は逃げるように去りながら、グラウンドを七色に染めていく。紫色の増した空に一際強い星が輝いたのを確認して教室の電気を点けた。時刻は午後5時半、全5時限の授業はとっくに終了のチャイムをだいぶ前に鳴らしていて、校舎の施錠の時間まで後1時間くらい。冬は夜が急ぎ足でやってきてのんびり居座る。一時間待たずに完全に辺りは暗くなるだろう。

そういえば自転車のライトがそろそろ切れかけていた気がする。窓に映る夕焼けを見ながら思い立ち、寄り道をしなければいけなくなったことに少しげんなりした。今日は灰色の絵具を贅沢に使ったような雲が、窓から見えるビル群の向こうから風上にかけてこちらに迫っていた。きっと太陽の最後の熱がなくなると同時に気温もぐっと下がり今年初の雪が降るだろう。とは今朝の天気予報の受け売りだ。だから早くさっさと帰ってしまいたい。

その為にも、自分をここに留めている元凶を何とかしなければならなかった。

隣の机に向かって唸っているそのイヴェールに苛々しながら、結局放っておけない自分に溜息が出る。応えるように曇った窓ガラスに指を走らせ、ウサギだか豚だか分からないものを落書いた。瞳をぐりぐり書いたらやけにつぶらになってしまう。どこの女子の絵だ。
シャツの裾で消そうとして、きゅるるんとこちらを見つめる瞳越しにぼんやりとこちらを見ているイヴェールと目が合った。咄嗟に気づかないふりをして、頬杖をつくイヴェールを白く曇らせる。吐く息に消しきれなかった跡が、ちょっと感じてしまった気まずさを素直に表してる気がした。

――居残り常習組と言えば大体俺とイヴェールの二人組を指した。得意じゃない教科の方が多い俺と、数こそ少ないが苦手な教科は徹底して壊滅的なイヴェールは、偶然にもお互い揃って駄目な教科がない。多くはどちらか一方が一方の宿題課題をフォローなり教え合ったりできる。

そして今回は、俺がイヴェールの方を教える番だった。教科は家庭科でイヴェールのネックは手編みのマフラー作り。提出期限は鬼畜にも課題を言い渡された日から数えて三日後、その発表が今日で、放課後になるとイヴェールは即俺の首根っこを掴んで授業中に渡された毛糸と格闘を始めた。

面倒極まりなくて最初は断ろうかと思ったが、明日明後日の祝日は丁度クリスマスを挟んでいることを思い出した。そんな時に呑気にマフラーの課題など残していられないだろう。渋々と付き合うことに決めて、俺は序に自分の分もやってしまうのと同時にイヴェールのを教えつつ時間を過ごした。











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