むっと顔を顰めたイヴェールはだってさ、と言葉を募ろうとする。しかし俺はこれ以上の発言を咎めるようにイヴェールのカップを奪って残りを飲み干した。

――そうでもしないと煩い鼓動が、押さえこもうとする主人に反抗して顔中で暴走を始めそうだった。冷静に、冷静に、冷静に!呪文のようにぶつぶつ口の中で呟いて、さも普通のローランサンであるかのように装った。いつも通りに。その装ったローランサンはふとあることを思いつき、面白そうな玩具を見つけた時の子どものように目を煌めかせて口の端で笑った。

「普通、“ただのダチ”を恋人より優先させるかよ」

釣竿の糸の先に餌をくっ付けて池に垂らす。ただ垂らすのではなく、距離を良く測ってから、どちらもこれまでのイヴェールと接した記憶の中から浚いこんだ最もベストなタイミングで。後は美味しそうな匂いをさせた餌に得物が飛びつくのを、焦らずじっくりと待つだけ。

果たしてそう時間も経たずに、即答の勢いで獲物は食いついた。

「“ただのダチ”っていうのは言い方が違うんじゃない」

優勢を信じて疑わない綺麗な顔がにやりと歪んで、意味ありげにローランサンの頬を手の甲で撫で上げたのが、事の始まりの合図。見事に釣りに引っかかったイヴェールに、見られないようにローランサンはにんまり笑った。











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