「いや納得できない」
「何だよ藪から棒に」
「今日はそれをお前に言われたくねぇよ!突然なのはイヴェールの方だろ、何なんだよ突然ここまで連れてきて」
「……その質問遅すぎない?」

確かに、だ。ぐっと詰まった俺に呆れたのか、一人分の紅茶をぐいっと仰いだ。俺の分は?と一応聞いてみると、僅かに残っている自分のコップを「飲む?」と差し出される。つまり自分で用意しろと言いたいらしい。俺は水分を諦めて、提出まで二日を残して完成したマフラーを手に取った。

紺色一色で編まれた長めのマフラー。所々穴が開いていたり、目が飛んでいたりで野性味の溢れる一品だ。俺は何気なさを装って、提出用紙に名前やら何やらを書き込んでいるイヴェールに疑問を吹っかけた。

「これ彼女に渡すんだろ?良かったじゃん、間に合って」

ぴくりとボールペンを動かす手が止まって、しまった地雷だったと一瞬焦る。しかし一呼吸あけた後、世間話を話すように「別れた」と返事が返ってきて、俺は「えっ」という反応を表面で返しながら内心でやっぱりかと溜息をついた。丁度一か月前に可愛い女の子と付き合いだした頃は、それなりに幸せそうだったのに。最近どこか苛々とした様子を見せ始めて、放置気味だった俺のとこに潜り込んでは遂に昨日のアレだ。いくら頭の鈍い俺でも、何かあったのかと探らずにはいられなかった。

「勿体ないことしたなクリスマス前に!結構可愛かったのに」
「顔は、ね。思ったより拘束きつかった。僕は自由でいたいのに」
「おーおー、言うね、色男。浮気は男の甲斐性?」
「そうじゃなくて。お前のとこに行こうとすると『友達と恋人どっちを優先するの?』だって。即答したら泣かれた」
「……因みに聞くけどどっち答えた?」
「ローランサンって」

突っ込む前に大きなため息が先に漏れた。










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