「これ、なんだっけ?」
桃色の可愛らしい紙には紙の色と同じ桃色のラムネみたいなものが三つほど包まれていた。いつのものかもわからないし、第一ラムネかどうかも曖昧なのに、あの時の私は好奇心に負けてしまいそれを口にした。確かにそれはさっぱりとした甘さで、口に入れた瞬間にしゅわりと溶けて消えた。つまりラムネだった。けれども、そこからの記憶が私にはない。
学校が終わって、塾に行くとそこには一人ポツンと小さな女の子がいた。見た目からして四、五歳ってところだろうか。新しい塾生?いや、あそこまで小さいわけはないか。私の視線に気付いた様でとてとてと寄ってきた。
「だあれ?」
「…あなたのお名前は?」
「わたし?わたしのなまえはね、緋色だよ!おねえちゃんは?」
「神木出雲よ」
緋色?同じ名前…ちょっと待って、その名前を言われると凄く緋色に似てる気がしてきた。目元とか鼻の形とか…。
「出雲ちゃんはいつも来るのが早いなぁ」
「志摩さんが用意するのが遅いからですよ。」
いつもうるさい三人組が教室に入ってきた。出雲はとっさに緋色を自分の後ろに隠した。ばれるのは時間の問題とわかってはいたが、隠さずにはいられなかった。
「お前、今なに隠したん?」
「な、何も隠してなんかないわよ!第一アンタには関係ないでしょ!変態!」
「なんでお前にそんなこと言われなアカンねん!」
「けんかはめっ!」
私と勝呂の間に入ってきたのは緋色で、腰に手を当てて片方の頬を膨らませている。か、可愛い!なんて可愛らしいのだろう。勝呂を横目でちらりと見てみれば案の定頬をうっすら桃色に染めていた。気持ち悪い。
「というかお前!緋色やないか!」
「なんで、アンタこんなに小さくなってるわけ!?」
「それは私が説明致しましょう」
いきなり現われたのはメフィスト・フェレスであった。彼は緋色をひょいっと片手で持ち上げた。緋色は嬉しそうに笑った。
「この間、私は小さくなる薬を手に入れまして、それを緋色さんに差し上げたのです。」
「なんで、んなもんを緋色にやったんだよ!」
「理由は単純明快です!緋色さんの幼い姿が見たかったからです★」
うっわ、怖っ!理事長はいわゆるロリコンだったのね、危ない危ない。私は急いで緋色を奪い返した。
「ああ!私の緋色」
「おめーのじゃねーだろ。」
「でも、どうすれば緋色さんは戻りますか?」
「私にもわかりません☆」
沈黙の中でウインクをしてぺろりと舌を出して、ブイサインをした理事長に殺意を覚えた。腕の中のちっちゃい緋色はそいつの真似をしてブイサインをしている。
小さなお星さまのはなし
長くなるので二つに分けました(´`)もう少しだけお付き合いください!
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