明日を生きる僕と昨日を生きる君









祓魔師になってから、私生活に余裕はなく、一緒に過ごす時間は高校の時に比べ随分少なくなったけど、それでも私と竜士は想い想われていた。そして私達は上一級という高い位置に就き、難しい任務や依頼が必然的に増えた。







「竜士…。」






竜士は部下を庇って死んでしまった。彼は優しい人…彼らしい死に方ね。そう思うと笑みが漏れた。来月やっと私はやっと彼の名字を名乗るはずだった。お互いの両親にも挨拶は済んでいた。遅くなって悪かったって顔を少し赤く染めてそう言った竜士がとても愛しく感じた、これはつい先日のことだ。竜士との幸せだった思い出だけが一つまた一つと鮮やかに蘇って、もうそんな思い出をつくることができないんだ、そう考えると明日が来るのが怖くて、寂しくて、竜士の冷たい頬に生ぬるい液体が流れ落ちる。私はひとりぼっちなの…?そんなの嫌だよ。竜士、竜士、助けて…傍にいてよ。それはじわりと溢れ、次々とこぼれ落ちた。周りを見渡せば、泣いている志摩や子猫さんや彼に関わる色んな人達。こんなにもみんなから好かれているんだね、少し妬いちゃうな。こんな涙を流している私をみたらきっと彼は笑うはずだ、心配するはずだ。泣けない、泣いたらいけない。私にはやることがたくさんある。竜士のサタンを倒す夢、寺を復興させる夢。叶えてあげなくちゃ…。私がもっともっと強くならないと…。






「大丈夫か…?」

「り、ん」





最近会ってなかった燐、今では聖騎士になっちゃって私よりずっとずっと忙しいはずなのにこの場に駆け付けてくれたみたい。涙を服の袖で乱暴に拭いていたら、肩をそっと抱かれた。いつそんなこと覚えたの、って言おうとしたけど、すぐに燐の胸に抱かれた。




「泣け。」

「な、何言ってるの?」

「我慢すんな。」





彼は昔から人の弱さを受け入れてくれる強い人。私は何度も何度もこの強さに救われている。彼の腕の中、あったかくてやさしい匂いで、竜士を思わず連想してしまった。




「りゅ、じ…、やだ、やだよ…う、ふぇ。」



張り続けていた虚勢が溶けて、燐は子供みたいに泣きじゃくる私の頭をゆっくりと撫てくれた。ありがとう、ありがとう。私は燐の腰に腕を回して、体を密着させた。





「坊の前でイチャコラせんといてくださいよ〜、坊はああ見えて独占欲すごいんやから。」

「うるせぇ。」




俺が八つ当たりされます、なんてうまく笑えてない志摩。それを見て涙でぐしゃぐしゃな顔で笑う子猫さん。ああ懐かしいあの頃みたい、きっとここな竜士が居たらきっと顔を赤くして志摩を殴っていたよね。







ねぇ、竜士



生まれ変わったら、また私を見つけだして?そしてまた恋をして、次はおじいちゃんおばあちゃんになるまで傍にいてね。そう考えたら不思議と明日が来るのが怖くなかった。
























「星を見る人」様に提出しました。楽しかった!これは連載の未来のお話みたいな←こんな悲恋みたいなのは初めて書きました。燐はヒロインのことが好きです。だけど、ヒロインは勝呂が好きなので、二人の幸せを一番願っていたのは燐、勝呂ならヒロインを幸せにできると信じていた燐。だから燐はやるせない気持ちなんでしょうね(笑)参加させていただきありがとうございました*







prev next

 

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -