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「さぁて、これでこれで物語に関わっちゃったぞ、と…。」 「なんや?関わるために接触したんとちゃうんか?」 「いんや、その時のノリで言ってみた。傍観もしてみたかったなぁ。」 「あぁ、稀李はそういうんが好きやったな。やったら別にすればええんとちゃうん?光かて俺らに接触した後に傍観始めとるやん。」 「あー!それもそっか!ってことで幸村クン、当分は現状維持でよろしく!」 前々からやってみたかった傍観を今回のことで出来ると思ったら稀李のテンションは上がる。 「約束が違うじゃないか!復讐してくれるって、言ったじゃないか!」 幸村は約束が違うと悲痛に叫ぶ。だってあんなことまで強要されてしたんだ。なのに、現状維持だなんて信じられない。 「えー?別に今すぐって言った訳じゃないしぃ。約束は違えてないよ。それに、これは慈善活動じゃないって私言ったでしょ?君を助けるのは私の娯楽の一つでしかないんだ。その娯楽を早めて他の娯楽が潰れちゃうとか、無い。」 「ってことで幸村クン、当分その健気に暴力に耐える様、拝ましてくれな?」 「……ッ!」 稀李と白石は保健室に幸村を残しさっさと帰宅。幸村はまた、教室に戻る。 ――自分に最低な奴らだけど二人、味方になってくれた。少しだけ、少しだけ自分に勇気が湧いてくる。不思議だ。一人じゃないって思えば、何となく気持ちが軽い。相変わらず体は重いけれど。 そしてそれから毎日、幸村は制裁と言われ殴られ、蹴られ、体中痣まみれ。いつも耐えていればいつか終わる。そのいつかだけを信じて今は耐える。その毎日の中でいつも視線を二つ感じる。白石と稀李のものだ。無感情に、ただ見てるだけ、どうこうしようと言う意思は感じられない。本当に見ているだけで、楽しんでいる。 「幸村ッ!まだ嘘をつく気か!部長として自覚がないのではいか!?まったく、たるんどる!」 今回は真田に柳、そして赤也が混ざって制裁をしてきている。後輩までも手を出してくる始末。もう、何でも有りだ。 「ッ………。」 「部長ー、無言はコウテイってとられるんすよ?ね、柳先輩?」 「あぁ、此処でまた一つ賢くなったな赤也は。」 「へへへッ、これに参加してると頭良くなるし、何より楽しいし、最高っすよ!」 「ふむ、赤也の攻撃力も上がってきている、テニスではつかない筋肉を使っているからか…。これはいい作用だ。…む、もう直ぐ精市の意識がなくなる確率87%。」 「えー、もう終わりっすかぁ…チェ、もっと体力つけとけッよ!」 「グゥッッ!」 赤也は幸村の腹部を思いっきり蹴り上げ、幸村は意識を飛ばす。それを見届けた三人は幸村を放置し、そこから去る。 意識を飛ばしたのは一瞬で、意識は朦朧としながらもあった。殴られることに耐久性が出来てしまったのか。それならばこの先地獄しかないなと感じながら体力の回復を待つ。 そして、幸村は二つの気配を感じた。また殴られると思っていたが、その二つの気配は幸村に危害を加えることは無く、手当をしてくれた。証拠に意識がはっきりし始めて痣になっているであろう部分を覗き見ると湿布が貼ってあったから。 一体誰だろう、と思いながら幸村は少しの幸せを感じた。今までは誰も自分を手当しれくれなかった。今は、誰だかわからないけど手当をしてくれている。 誰だか分からないと言うのは、違う。もう誰だ分かっている。 ただ、前回のあの人たちの態度からこの行為を行う意味が分からないから分からないと言うことにしているだけである。 いつかはっきりとした理由が分かるだろうと幸村はそれに甘えることにした。 |
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