![]() その日がホワイトデーだと気付いたのは中西くんとの通話を終えた後だった。 彼が会えないかと指定してきた日は休日でもない週末でもない平日だったのでどうしたのかと思ったが、もしかするとそういう意図があるのかもしれない。 込み上げてきたのは期待、と罪悪感だ。 (いやいや、中学生の子にお返しを貰うって……しかもあんな渡し方したものに) そう言い聞かせながら、渋沢くんからは次の日にお返しを頂いてしまったし(彼の作ったお菓子は非常に美味しかった)、中西くんもモテるし慣れていそうだよなぁと考えてしまうと、楽しみだなぁと思う気持ちの方が強くなってしまう訳で。 せめて本人の前では悟られないようにしよう、そう思ったのが三月に入ってすぐの日。後で春樹に聞いた話では、その翌日が武蔵森中等部の卒業式だった。 お互いの部活が終わった時間となると日はすっかり沈んでしまっている。街灯だけが照らす道を武蔵森へ向かって歩く。 中西くんは私の学校の方へ来てくれると言ったが明日も部活のある子を遠くまでやって来させる訳にはいかない。私の方が早く部活も終わったし丁度良いだろう。 武蔵森サッカー部の練習が終わる時間から20分がすぎている。まあ、その時間も予定に過ぎないので残って自主練をする人もいるだろう。 「中西くん!」 「先輩! 遅れてごめんね!」 中西くんはサッカー部のジャージ姿で、練習からそのままやってきてくれたのが分かった。ただ持っているはずのスポーツバッグは見当たらない。 「あれ、荷物は……?」 「バッグは靖人に持ってって貰ったから大丈夫」 話の続きを忘れたので放置\(^o^)/ |