1万打-1 | ナノ
「かいちょーかいちょー!桜が満開だよーお花見しよぉー」
始業式も終わり本格的に始動し始めた生徒会。
珍しく集合時間に遅れずやってきた稲嶺のその言葉に、急遽俺たちは花見を決行するのだった。
***
「おい菱川兄弟!遊んでねぇでちょっとは手伝え!」
「えーでもだって」
「会計先輩も遊んでるよ」
「「だから僕らもいいんだよね?」」
「あいつからは頼むからなにも学んだりすんじゃねぇ!」
満開の桜の下で、子供のようにはしゃぐ菱川兄弟(ともう一人)を追いかける。俺が準備してやってんのにあいつらがしないなんて可笑しいだろう。腹が立つ。
なにがなんでも手伝わせてやろうとしばらく奮闘していると、背後からわざとらしい咳払いがした。
…げ、忘れてた。
「手伝ってくれて嬉しいよ、さぁ食べようか?」
にっこりと笑う宏紀。その笑顔に震撼した俺たちは、即座に鬼ごっこを中断してびくびくしながら宏紀の敷いたレジャーシートの上に座った。
てか準備なんてシート敷くだけなんだから良いじゃねぇか、そんな怒ることでもないだろう。俺は嫌だけどな。
と、いち早く気を取り直したらしい稲嶺がごそごそと何かを探し始めた。ふんふんと鼻歌さえ歌いながら紙袋を漁る稲嶺は、案外強いメンタルの持ち主なのかもしれない。
「じゃあ早速乾杯しようじゃなーい!」
「「わぁ!会計先輩さっすがぁ!」」
じゃじゃーん!と口頭で効果音を高らかに叫びながら、稲嶺が紙袋から取り出したもの。
それは――――酒。
「ばっかてめぇ何堂々と出してんだよしまえ!」
「えーなになにかいちょーったら飲めないのぉ?」
「ちげぇよアホ!こんな誰に見られるかわかんないところではやめろって言って…」
「会長先輩は生徒の代表なのに」
「会長先輩の生徒の模範なのに」
「「見られてなければお酒飲むんだ!サイテー!」」
「ちょ、声でけぇ!」
学園のトップたる生徒会が外で全員集合しているのだ。ギャラリーが増えるのは当然のこと。すでにかなり遠巻きに人の壁が出来ていた。俺たちは珍獣かなにかか。
けらけらと笑う菱川兄弟の隣で、宏紀がちゃっかり稲嶺の持ってきた酒を全員のプラコップに注ぎ始めた。一番こういうことに煩そうな宏紀だが、こいつがかなりの酒豪であることを俺は知っている。部屋で前に差し呑みをしたことがあるからな。
「おい宏紀!さすがにここじゃあ…」
「大丈夫だよ一杯くらい。あんだけ離れてれば何してんのかもよくわかんないだろうし、まして何飲んでるかなんてわかりっこないよ」
「そうかもしれないが、ちょ、あーあー!」
にこにこしながら大層嬉しそうに自分のコップに並々と注ぐ宏紀に、がっくりと脱力してしまう。こんなところで欲望に忠実すぎる。
全員分注ぎ終わって満足した宏紀が、まだ残っている分を稲嶺に返した。
そして4人からの期待の眼差しを一身に受け、思わず口許が弧を描く。
あぁ…しかたねぇよ、注いじまったもんはもう飲むしかねぇよなぁ。
「…しゃあねぇなぁ」
「やったーかいちょー大好きー!」
「酒好きな会長先輩が」
「酒好きな音頭とってよ」
「ん、そうだな、早く飲もう」
やっすい愛を叫ぶ稲嶺と、ニヤニヤしている菱川兄弟と、本音が漏れる宏紀。
全員がコップを持ったのを確認し、俺は徐に口を開く。
「―――そんじゃ、第109期生徒会の結成を祝して!」
「「「「「乾杯!!」」」」」
*end*
1万打ありがとうございました!
Cheers(乾杯)!!
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