5万打御礼企画 | ナノ
バン、と書類を机に叩きつける音。座っている人間を見下す人形のように整った顔。
生徒会の人間と風紀の長を除く、会議室にいる人間全員がびくりと体を揺らした。
【俺様 ときどき ×××】
「却下だ」
ただ一言、それだけ告げる。
すぅっと細められた目が机を囲む全員を順々に見回していく。その恐ろしいほど整った顔と刺すように冷たい威圧感に、みな目を離したいのに離せない。ゆっくりと形の良い唇が三日月を描くのを、ただ呆然と見ているしかなかった。
「よくもまぁ、こんなお粗末な案を提出しに来れたものだなぁ?これで通ると思ったのか?」
「………」
「ほう?ならお前らはあれか、通りそうにないとわかっていて来たと?俺達の仕事を増やしに?」
「そんなことは…」
「成る程、お前らは余程俺様を怒らせたかったと見える」
「そんなつもりじゃ!」
顔面蒼白。それでいてそうさせている人物から目を離すに離せない。憐れなほどに体を震わせて、それでもまるで魔法にかかったかのように動けないでいる彼らは、己の浅はかな行いをもう十分反省し、後悔していることだろう。そう判断した生徒会の副会長は、隣でこの“公開処刑”を楽しんでいるであろう己のトップへと声をかけた。
「会長、そろそろ時間です」
「あ?」
「もういらっしゃいますよ?」
「…!」
刹那、冷たさしか感じさせなかった美貌が喜色に染まる。しかしそれも一瞬で、すぐに元の冷笑に戻り、改めて冷めた視線が不届き者共へと向き直る。あぁ、ついに決が下される―――自分達が失敗を犯した自覚のある者はみなそう思ったが、しかしその口から下された判決は、彼らが思っていたよりもずっと軽いものだった。
「よしじゃあお前らすぐ帰れ」
「…え?」
「明日までにもう一度練り直してこい。提出は明日だ。明日生徒会室に、」
「会長、明日は日曜日で生徒会室には誰も来る予定はありませんが」
「あーそうか…なら俺の部屋に来い。明日、俺の部屋だからな、わかったか?」
「……え、え?」
「わかったのかわからないのか!!」
「は、はいいいいい!!!」
ビシッと座ったままきをつけの姿勢になり発せられた悲鳴のような返事に満足したように頷くと、会長はさっさと部屋を出ていってしまった。その後に続いて出ていくのは風紀委員長。訳がわからず硬直したままの生徒のために、生徒会役員は仕方なく翻訳してやることにした。
「要するに会長は今日はもう貴方方に割く時間はないのです」
「だからぁ、明日までで良いからちゃんとしたもの作ってきてねぇー」
「…会長に…これ以上迷惑…ダメ…」
要点だけ告げると、はっと我にかえってこくこくと頷くのをちらりとも見ずに、役員はすぐに会長を追いかけて部屋を出た。そして最後に副会長がくるりと振り返る。
「あぁ、あと明日は成るべく遅い時間にしてあげて下さいね。
彼の色気に当てられたいというのなら別ですが」
にーっこり。
そう完璧な笑顔で言い残して、王子様は去っていったのだった。
***
「お前ほんとあからさまだよな」
「は?なに言ってんだ?」
「早く会いたいからってあんな適当に切り上げやがって」
「んなわけねぇだろアホ」
ふん、と鼻を鳴らす幼馴染みに、風紀委員長は喉を震わす。
誰にでも俺様で威圧感のある彼のあの人に会う時の変わりようは非常に微笑ましい。しかも本人には自覚がないのがまた面白いのだ。それを間近で鑑賞できるのは、幼馴染みの特権の一つである。
長いコンパスを駆使してすぐに生徒会室の前まで辿り着いた二人は、そこで一度ぴたりと止まった。ついでいつものようにくるりと向かい合う。
「シャツ」
「ん」
「ネクタイ」
「よし」
「髪」
「大丈夫、男前」
とん、と拳で胸を軽く叩いてやってから、少し不安そうにしている顔に笑いかける。いつもなら絶対に見られないような顔。だけどこんな顔をするのも、中でびっくりするくらい無邪気に笑うのも、真っ赤になるのも、みんなドキドキしすぎていて自覚がないなんて、本当にこの幼馴染みは可愛いと思う。
こんなに不安にならなくたって大丈夫だということだって全く理解していない。あっちだって馬鹿みたいにベタ惚れなのだから、無駄な心配なのだ。らしくない行動だって格好だってミスだって、みんなみんな嬉しいはずなのだから。
「ほら、行ってこい」
その言葉に神妙な顔で頷き、緊張をみなぎらせながら扉を開けようとする後ろ姿に、風紀の長はまた小さく喉を震わせた。
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