5万打御礼企画 | ナノ
「なあ太一(タイチ)、今日こそいいだろ?な?な?俺、お前のことすっげー大事にするからさ!だからほら、さあ俺に身を任せて…!」
「うるせぇ帰れ、てめぇに抱かれるほど俺ぁ安かねぇよ」
【煽りたいお年頃】
最高級の木製の扉を力任せに押し開けたガキが戯れ言を抜かす。ああまた要らねえ傷が付いたと嘆きつつ、相手にするのもアホらしくて書類から顔を上げず一蹴。
つーかおい、なんだこの書類、不備ばっかじゃねぇか。これじゃ受理しようにもできるわけがない。ここまで上げるんならきっちり仕事してから上げろよ使えねぇな。どこからだこりゃ、体育委員か?ったくあの脳筋どもめ。俺様が直々に行って指導してやろうか、ああ?
「なんでだよ!俺なんだってするから!悪いところあれば直すから!」
「うおっ、びっくりさせんなアホ」
「確かにまだ太一より背は低いけどすぐ追い越すからさ!」
「お前まだいたのか懲りねぇな…」
意識がすっかり書類へと向かっている内に目の前までやってきていたガキに、不覚にも驚いて肩が跳ねた。おまけにこちらの驚きとか話とかもう完全無視で満面の笑みで誘ってくる転入生に脱力。
なんなんだよこいつ、会話する気ねぇのになんで会話してるフリするんだよ。わかってるのについ会話しようとしちまうじゃねぇか。これだから宇宙人とは会話できねぇ。ああ違う、会話できないから宇宙人なのか。
「いい加減にしろ、見りゃわかるだろうが俺ぁ忙しい」
「だったら仕事手伝うから!な!!」
「っから声でけぇんだよアホ!てめぇにゃなんも頼めねぇよバーカ」
「なんでだよ!俺補佐なんだろ!?ていうか太一、さすがにアホとかバカとか言い過ぎだろ!」
早速この書類として成立していない紙切れを作りやがった脳筋共に会いに行ってやろうと会長席から立ち上がって宇宙人の横を通り過ぎたところで、びたりと止まる。待て、今こいつなんて言った?そうか、そうだよこいつ、いつの間にか補佐になってたんだっけ。今の今まですっかり忘れてたが、つーことはこいつにこの紙切れ持ってかせれば、こいつは俺から離れるし脳筋共にも宇宙人語でとりつく島なくやり直しさせられるのか?なんてこった完璧だ。天才なんじゃないのか、俺。捨てる神あらば拾う神あり。こんな宇宙人にも使い道があったとは。
なんて調子に乗って、勢いよく振り返ったのが悪かった。
「よしじゃあてめぇに初仕事を…はっ!?」
「ちょっと待てよたい…うわっ!」
視界に火花が散るとは、まさにこの事。
まさかの綺麗な正面衝突。おまけに俺が振り返っただけなのに対して追いかけようとして突っ込んできたアホのせいで、俺たちは見事にバランスを崩した。
「っ…!」
「あ、うわっ…!ごめん太一大丈夫か!?」
「い゛ッ………!!」
勢いよく倒れ込んできたクソ野郎の下敷きになり、強かに頭を床に打ちつけた衝撃で声も出なかった。余りの痛さに身悶える。ふざけんな、やってんらんねぇ、なんつー痛さだバカ野郎。くそ、拳握りしめたせいで書類ぐちゃぐちゃじゃねぇか。つーかやべぇ、痛すぎて涙出てきやがった。
「っくそ、てめ、まじふざけんな…っ!」
「ご、ごめん太一…!」
「っんだよ…つーかいつまで乗っかってるつもりだ、早くどけ」
「や、でも、」
一向にどこうとしないアホに苛ついて見上げれば、そこには珍しく戸惑ったような恥じらったようなそんな顔。おお、さすがはイケメンホイホイ、至近距離に耐える顔してやがる。いつもはうるせぇししつけぇし顔も見る気にならなくて忘れてたが、こいつあの理事長の甥なんだったっけか。
そしてまあ、俺もこいつが戸惑っている理由に気づかないほど鈍感ではない。あんなに迫ってきたくせに、ここにきて目を泳がせるチキンっぷりに盛大に吹きそうになる。なんだこいつ、面白ぇ。珍しい顔もしてるようだし…こんだけ痛い思いさせられた仕返しだ、少しからかってでもやるか?
「なんだよ歯切れ悪ぃな、どうしたんだよ新見(ニイミ)クン?」
「った、太一…っ!」
「っくく、どうした怖じ気づいたか?」
ゆるりと目を細めて口角を吊り上げれば、あからさまに生唾を飲み込む音。あんな勢いで迫ってきていたくせに動けずに固まってしまっているガキが愉快で、そのくせ元気になっている性欲全開で正直なムスコがますます愉快でたまらない。いつも散々振り回してくるこいつが俺に翻弄されるなんて、ああ、最高に気分がいい。
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