5万打御礼企画 | ナノ
「なぁ料理長、今日のオススメはなんだ?」
「あー今日は…っておいお前、また来たのか?ったく、何度来ようが今日という日はどうやっても明日にゃならん。今日は今日のままだ残念ながら」
「…?んなこと知ってる」
「…馬鹿を見るような目で俺を見てくれるな頼むから。いいか?何度来たって今日のオススメは今日のオススメのままなんだよ明日のオススメにゃならねーよ」
「なんだと…!?」
「なんだとじゃねぇ馬鹿野郎!なんだってそのご立派な脳みそは食いもんに関してだけネジゆるっゆるなんだ…!」
【今日のオススメ】
驚いて口を開けた間抜け面でさえ男前とか憎たらしいにも程があるぞこのガキ…!
思わず立場も忘れて(あってないようなもんだが)怒鳴り散らすも、それを我関せずと聞き流し、あろうことか俺に落ち着けよと宣うは、学年主席で眉目秀麗、運動神経も抜群な完璧人間、我が学園の生徒会長様々である。
しかしもう何度目なんだこの会話は!最近じゃあもう親衛隊とやらもこいつが俺に絡んできても温い目で見てくる始末じゃねぇか、いい加減にしてくれよ!
「つーかお前いくらなんでも食い過ぎだ、夕飯時まで待ってろ」
「そんな…!無理だ、待てねぇよ!」
「いや待てよそこは!大体にして、お前もっとやることあんじゃ…」
「駄目だ!それ以上言ってくれる」
「会長ーーーー!!!」
「な…ってほら言ったじゃねぇか噂をすればなんとやらだ」
うんざり、と言う風にこちらを見てくるのに顔をひきつらせる。なんなんだよ、俺が悪いのか俺が。どう考えてもやることやってないお前が悪いんだろうが。
そんなやり取りをしてる間にも、会長サンの後方に物凄い勢いで迫る人影が。きっと今その人物の登場で湧きに湧いている生徒諸君は、全力で走るお姿も涼やか☆とか言ってのけるんだろうが……悲しいかな、俺の目には鬼の形相にしか写らん。普段はあんなに優美で爽やかな彼にこんな姿を晒させるなんて、罰当たりにも程があるぞ会長サン。
「会長!また食べるんですか!お願いですからやることやってからにして下さいよ!」
「おー副、今日も元気だな」
「何が今日もですか!今日初めて会ったみたいな顔して午前中をなかったことにしないで下さい!帰りますよ!」
カウンターの上に乗せられた会長サンの手をむんずと掴む白く細い手の持ち主は、会長サンと同じく生徒会の副会長サン。こんな奴の下だなんて苦労するだろうな、痛み入る。
それにしてもそうか、会長サンは午前中のことをなかったことにしたわけだ。だからオススメも覚えていないって?…いやいや、ねーだろ。昼のことくらい覚えとけよ、まだ三時間くらいしか経ってないんだから。
「今日も大変だな副会長サン」
「あぁ料理長、こんにちは。毎度うちの馬鹿がお騒がせして申し訳ありません」
「いやお前の方が大変だろうよ、ごくろうさん」
労いの言葉をかけてやると、ははは…と目が明後日の方向を向く。その哀愁の漂い加減があまりにも不憫で、思わず頭をぽんぽんと撫でたくなった。
若いのに大変だな…今度プリンでも作ってやるか。
「おいほらそんなこもよりも、早く今日のオススメを…」
「お前そんなことはないだろそんなことは…。しかしこんな時間だと軽食くらいしか準備がねーから、」
「あ、だったら会長!生徒会室に顧問が差し入れて下さったケーキがありますよ!」
「ケーキィ?」
「はい!だから帰りましょう!仕事しましょう!」
軽食くらいしか準備がねーから時間かかるぞ、と言おうと思っていたが副会長サンに物凄い勢いで遮られる。その副会長サンのあまりの必死に圧され、まぁ別に無理矢理言う必要もねーかと二人を見ていると、むくれてこっちを向く会長サン。しかしそれを目敏く見つけた副会長サンの方が、会長サンより早く口を開いた。
「料理長も会長を甘やかさないで下さいよ」
「…ん?は?俺が一体いつどこでこいつを甘やかしたって言うんだよ?」
「餌付けするなって言ってるんです」
「だからそんなこと俺がいつしたよ!」
餌付け?餌付けってなんのことだ。
俺ぁここの食堂の料理長であるからして、食いもんを求めて来た生徒に料理を出すのは当然のこと。というか、それが仕事なんだが。
「俺だって餌付けされた覚えはねぇよ。つーか副、俺は今菓子の気分じゃねぇ」
「…はい?」
「もっとがっつり食いたい。じゃなきゃ夜まで集中できねぇ」
「あ"ーもう会長、お願いですから…!」
「なぁ、賄いで良いんなら俺のチャーハンまだ残ってっけど」
そういえば、と声をかければ、二人が一斉にぐるりとこちらを向く。次いで目を輝かせた会長サンが、副会長サンがなにか言う前に目にも止まらぬ速さで椅子をカウンターまで持ってきた。
「それ、くれ」
「ちょっと会長!」
「ん、ほれ」
「すげぇ!やった!恩に着る!」
「あーちょっと!だから甘やかすなって言って…!」
では早速、とチャーハンを頬張る会長サンに、がっくりと項垂れる副会長サン。なるほど、これが甘やかしてるってことになんのか。全然甘やかしてる自覚なかったな。
「んー…旨い。幸せ」
だけど、この偉そうなクソガキが、こうやって幸せそうに食べている姿好きなんだ。ついつい食わせたいって思っちまう。だから副会長サンの言う“甘やかし”をしちまうんだよなぁ。
「会長、もう食べ始めてしまったことには何も言いませんから貴方もうちょっと早く食べられませんかね!」
「あ?早食いは健康に悪ぃんだぞ」
「だとしても限度があります!なんでそんな食べるのに遅いんですか!どんだけ時間かかるんですか!」
「あーもう落ち着けよ、血管切れるぜ」
ぼんやりと行儀よく食べている姿を見ていると、はぁ、と息を吐いて一先ずスプーンを置く会長サン。くいっと親指で後ろを示す。
「会計案の話だろ?聞いてやるからお前も椅子持ってこい」
「…はい」
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