5万打御礼企画 | ナノ
「ちょっと待て!待てってば康平(コウヘイ)!」
さぁドアを閉めようというところでやっと聞こえてきた足音。制止の言葉と共にばたばたと後ろから追いかけてくるそれに、仕方なく振り返る。
出ていったあとすぐに追いかけてこないあたり、本当に、こいつは。
「なんだこのヘタレ野郎」
「ひでぇ!」
「なにがだ?お前がヘタレでビビりなのは真実だろう」
はん、と鼻で笑ってやる。
その悪ぶった外見とコミュ力の低さのために、学園から一匹狼だなんだと恐れられているこの男が、本当はヘタレでビビりなのを知っているのは何人いるんだろうか。部屋に入るより前に追いつけるくらいには部屋を抜け出せたのは、ドヘタレのこいつにしては奇跡かもな。
あぁそうか、なら寧ろ褒めてやろうか?
「なんの用だよ?」
「なにって、謝りにというかなんというか…それより入れてくんね?」
「…良い御身分だなぁ」
なんで俺が怒ってるのかさえわかってないくせに。
口元に皮肉な笑みを浮かべながら、しかしそう言いつつ扉を開いてしまうあたり、俺は本当にこいつに弱い。
悔しいけどどうしようもねぇよなぁと思いながら迎え入れれば、しかし入った瞬間に抱き締められる。首筋に顔を埋めて大きく深呼吸する恋人に、カッと体温が上がるのがわかった。
「ちょ、なにしてんだてめぇ!」
「んー…」
「っおい!」
「静かにしてろよ康平、充電してんだから」
―――こいつ、は。
どうしてあんなにヘタレなくせに、俺にだけは強引で強気なのか。
そんなギャップに墜ちたと言ってしまえばそれまでなんだけれど。
「…俺は腹が立ってるんだが」
「ごめんて。でも俺も怒ってるけどな?」
「は?なんでだよ」
意味がわからない。なんでこいつに怒られなきゃならないんだよ?
むっとして答えれば、ゆるりと視線が上がってこちらを見上げる鋭い瞳。
だからそれやめろって。俺仕様の“一匹狼”に弱いって言ってんだろ…!
「気づいてなかったのか?あいつの狙いがお前だって」
「あいつって宇宙人のことか?」
「代わる代わる相手を変えてお前の反応見てたじゃねぇか!それなのにご丁寧に俺に反応してくれちゃって…いや嬉しかったけどね?逆に反応なかったらどうしようとは思ってたけどね?だけど反応しちゃうと…」
後半はもはや独り言。しかしあれはそういうことだったのか?いや、違わねぇか?違うよなぁ。というかそもそもあの宇宙人には興味がない、俺はお前の話をしたいんだがな。
考えつつ、いつもの癖で郁の綺麗な銀の髪を撫でる。すると上の空だったことがバレたのか、首筋に歯を立てられた。避ける間もなく人にしては鋭めの犬歯が首に食い込んだ。
このヘタレ狼め…!
「いった!いてぇって、おい!」
「話聞いてねぇし…あぁもう腹立つこの鈍感…」
「お前にゃ言われたかねぇよ!」
そもそもお前の場合は外部云々じゃない。とりあえず俺がお前にベタ惚れだってことに気づけよこの野郎…!俺がどれだけお前優先で生きてると思ってる!
なんて、直接は絶対言えもしないことを考えていたら。
「あ、いいこと思いついた」
「あ?なんだよ、ッ!」
「ん、肌白いから映えんなぁ」
首筋に、チリッと小さな痛みが走る。
そこを撫で、満足気に笑う恋人。
「歯形つけたいけど噛んだら痛そうだしなぁ」
「ったり前だエセ狼!」
「だからまた今度な」
あぁもう、あんなにヘタレのくせに、俺に関してだけは自己主張が強いんだから堪らない。
ふざけんなと怒鳴りつつ、隠しきれない場所に赤く付いているだろう印に、どうしようもなく嬉しくなったのは秘密だ。
*end*
外部にヘタレ×恋人にヘタレ
会長:康平(コウヘイ)
一匹狼:郁(イク)
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