5万打御礼企画 | ナノ
「こーへー!!来たぞーーー!!!」
大音声と共に開かれた生徒会室の扉。
最近日課になってしまった宇宙人の来襲に、今日も今日とて俺は、頭を抱えたくなったのだった。
【ヘタレだって恋をする】
「なぁこーへー!仕事ばっかしてねぇでこっち来いよ!!」
いつも通りのありがた迷惑なお誘いを、いつも通りスルーする。
仕事ばっかしてるのは誰のせいだと宇宙人の周りでわいわいしてる奴等を叱り飛ばすのは最初の一週間で諦めた。部外者は長時間ここに居座るなと追い出そうとするのも諦めた。そもそもなんで俺がこんなことを、と頭の中で愚痴るのも、最近やめた。
結局なにをしようとも肩透かしされて疲れるだけだから、考えない方が効率が良いのだ。
「あ!ねぇそれ!あーんしろよあーん!」
「ちょ、私がやります…!」
「ダメだろ我慢しろよ!俺にあーんしたいのはわかるけど順番だぞ!」
あぁ、今日もまた、犠牲者が決まったようだ。
宇宙人くんはなぜか、毎日本日のお供というものを決める。そして取り巻きは、そのお供が至高のお役目だと思っているらしい。なんだかここまで来ると、怒りや呆れを通り越して哀れに思えてしまうな。
なんて、そう思えたのはそこまでだった。
「ほら郁(イク)!はやくあーんしろよ!」
「ちょ、やだっつってんだろやめろよ」
「恥ずかしがり屋だな郁は!じゃあ部屋帰ってからのお楽しみな!!」
よく知っている名前に、聞き覚えのある声。
思わず書類を書いていた手が止まった。嫌な予感を湛えつつ、ゆるりと視線をあげる。
「じゃあ膝枕しちゃおっかなー!」
「やめろって!」
「郁はほんとに口だけだな!嫌じゃないだろ!ほら!」
途端目に入った光景に、自分でも驚くくらいに気持ちが冷えるのがわかった。
気持ち悪い。気分が悪い。
無理矢理だとわかっていたって、恋人が他の人間に膝枕をしているのを見て、気持ちが良いと感じる奴がいるか。やつが勝手にと言ったって、振り落としもせず、口だけで抵抗して、実質膝枕を許容する。そんな光景を見せられて、平気な奴がいるか。
恋人がいる目の前でこちらに悪そうにするわけでなく、寧ろ視線で恋人に助けを求める。
そんな男を、この俺が助けるとでも?
(そんなこともわからないのか、あいつは)
持っていたペンを置き、ゆっくりと一つ深呼吸。
生徒会室から出るために立ち上がる。
気分の悪い思いはしたくない。
卑屈にだってなりたくない。
けれど何をされても離れることができないくらいにはお前のことが好きな俺には、選べる選択肢はたった一つ。
「あっ!こーへーどうしたんだよ!」
「帰る。お前らはここで好きにしてろ」
「なんでそんなこと言うんだよ!?わかった!俺が郁にばっか構うから嫉妬してんだろ!」
「あぁそうだな、そういうことにしといてくれ」
適当に受け流して書類を持って部屋を横切る。
役員共は満足そうにしていたが、その中でただ一人、一番柄の悪い男だけが焦ったような表情になった。
「おい郁!こーへー行っちゃうじゃん!お前のせいだからな!」
「えっちょ、俺のせいじゃ…!」
言い訳しながらこちらにすがるような目線を向けるのを一瞥し、そのまま部屋を出る。
なんで自分のせいじゃないと思うのか。自意が低すぎるだとかヘタレだとか、そんなんは関係ない。それはつまり、自分が俺の立場になった時に、なんも感じないってことか?
あぁもう、俺ばっかり好きみたいで、嫌になる。
「お前のせいだよばーか」
呟いた言葉は、閑散とした廊下へと消えていった。
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