Arcadia | ナノ
「体育祭まで一週間を切った。もう詰めに入ってないと遅いがちゃんと進んでるな?」
各委員会の長を集めての会議。現状報告、要望に加え、他の委員会との連携の確認をしたり必要な物の最終チェックなど、体育祭に向けてもう大詰めだ。もうほとんどは最後の確認だけ。漏れがないか、一つ一つ確認していく。
もうラストなので変更はほとんどない。今年は本当に、優秀な委員長達に恵まれたと思う。その優秀な彼らのおかげで順調に会議が進んでいくなか、一番力を入れなければならない部署の番が回ってきた。
「―――よし、放送関係は大丈夫だな。じゃあ次、警備関係についてだが、風紀からなにかあるか?」
最重要項目の一つである、当日の警備。
循環、見回りにはさすがに人手が足りないため、各委員会から何人か人を出すことになっている。うちは俺と稲嶺、二人ともが出ることになっていた。
視線をそちらに向けると、頷いた峰岸が立ち上がる。ふっと他の委員長たちを見回したあと、最後に俺を真っ直ぐに見て口を開いた。
「変更点は一つだけ。当日の警備から、生徒会役員は抜けてもらう」
「はっ?」
「以上だ」
「ちょ、なんでだよ!」
それだけ言って再び椅子に座る峰岸。予想外の展開に、ざわつく周りを気にせず声を上げた。
こいつ、なに言ってやがる?
「お前らは運営で忙しいだろう。他の委員会からの助っ人もいるし、二人くらいいなくったって警備の方は大丈夫だ」
「いやでも」
「お前らがわざわざ入る必要はない。警備責任の決定は以上だ」
「っおい!」
各部署の方針は、基本的に責任者に委ねられている。その責任者に決定事項だと告げられてしまえば、もうどうしようもないのだけれど。
なにも事前に伝えられていなかった突然の変更。ただ単にそれだけの理由なら、前もって言ってくれていてもいいはずだ。あまりにも唐突で無理矢理な変更に意味がわからずぎゅっと眉を寄せて峰岸を見るも、やつはもう話は終わりだとこちらを見もしなかった。しかし他の委員長達もいる手前、ここでいざこざを起こすわけにもいかない。
「チッ…次の部署いくぞ、運営!」
なぜこんな場で決定事項だけ告げたのか?きちんと話を聞きたいが、こんな体育祭直前にまた変な噂を流されても堪ったもんじゃない。
とりあえず後できっちり理由を吐かせてやる。心のなかでそう決めて、俺はざわめく会議室を無視し、無理矢理次へと進めることにしたのだった。
***
「おい峰岸!待てよ!」
会議が終わり、わらわらと散っていく委員長達。
その中に一際でかい背中を見つけて追いかける。そのまま逃げるように行ってしまうかと思われたが、しかし思いがけずすんなりと歩みを止めた風紀の長にすぐ追いついた。
「ちょっと話がしたい。こっち来いよ」
「…ったく」
なぜか呆れたように吐かれたため息に眉をしずめる。まだ残っていた委員長達がこちらに注目しているのが背中越にわかるから、ここにいても二人にはなれないと踏んでとりあえず会議室の外へと出た。大人しく後ろをついてくる峰岸を確認しつつ、廊下から死角になっている柱の影へと向かう。
周りに人影がないのを確認し、くるりと峰岸の方へと向き直った。
「おい、さっきのどういうことだよ?」
「あ?さっきの?」
「とぼけんなよ、なんであんなこと急に言い出したんだ」
そう詰め寄ると再びため息を吐かれ、なんだか俺が駄々を捏ねてるみたいな感じになってイラッとする。なんだこいつ、無駄に冷静な顔しやがって。
「別に外されんのは構わねぇよ。だがなんの相談もなしに上から決めつける、あのやり方は気に食わねぇ」
prev
|
back
|
next
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -