Arcadia | ナノ
「な、か、会長何言ってるんですか!」
「そうですよ、一番の被害者は貴方でしょう!」
「あーもう。ねぇ、俺そんなん興味ないんすよ」
「…は…?」
刹那、思考が止まる。
興味?興味が、ないだと―――…?
信じられない。
こいつは生徒会のやつらと違って何か仕事を放棄したわけじゃない。今回の暴走は、少し盲目な、だけどただの恋心が起こしたもの。そう、それだけなのだから、俺だってそこまで介入する様な、無粋な真似をするつもりなんざなかったさ。
だけど―――自分の行動に伴って起きた弊害に興味ないなんて言われちゃあ、黙ってなんかいられない。
「俺が言いたいのは、瀬奈に何かあったら只じゃおかないってことだけっすから。誰が一番だなんて俺には関係ないし」
「…なぁ高瀬、そりゃあまりにも無責任なんじゃねぇのか」
「無責任?」
頭の上に疑問符を浮かべる高瀬。
中谷がはらはらと俺たちを見ているのがわかる。
「あぁ、無責任だよ。確かに誰かを好きになるのは悪いことじゃない。だけどその気持ちばかりを優先して、周りに目を向けなくなって好き勝手するのはルール違反だ。特に自分が周りに与える影響が強い人間であるのなら、尚更な。…バスケだってそれは同じだろう?」
「それは…」
「お前の行動のせいで、篠崎、中谷、風紀がとばっちりを食らう。自分の影響力を考えず、親衛隊も発足許可を出したくせに放置している。挙げ句の果てに興味ない?これのどこが責任ある行動だって言うんだよ」
「…っ」
篠崎に盲目的な恋をする前は、もっと周りを見れるムードメーカーだったんだろう?親衛隊もきちんと管理していたんだろう?
「高瀬、一度落ち着いて周りを見てみろ。全体を俯瞰しろ。ゲームメイクは得意だろう?」
真っ直ぐに焦げ茶色の瞳を見据える。高瀬はどこか居心地が悪そうに瞬いた。
明るく真面目で、みんなに気を配れて、親衛隊とも仲良くしていて、バスケに真剣な人気者。
結局は部との兼けもちが無理そうで没になってしまったし、今更言う気はないけれど。
(―――俺は、お前に補佐を任せるつもりだったんだ)
恋に盲目になって突っ走る今の姿もお前の奥底に潜んでいた本性なのかもしれない。有りのままの姿なのかもしれない。
だけど、以前のお前だってお前なんだから。
「恋をするのは結構だが、自分を見失うなよ高瀬。お前の影響力はお前が思ってるよりもデカイことを自覚しろ」
「な、んであんたにそんなこと言われなきゃなんないんだ…!」
「言われたくなきゃそれ相応の行動をするんだな。自覚はあるんだろう?」
「っ!」
悔しそうに歯噛みする高瀬。俺を睨み付ける目は、ギラギラと燃えている。
―――そう、それでいい。
自分の言動についてとやかく言われたくないんなら、言われないような行動してをみせろ。文句を言えないような行動をして、俺を納得させてみろ。
自覚はあっても止められない、それが恋というやつなのかもしれない。だけど本当に、恋のためにその他を壊しても、全てを棄てても良いのか?
それじゃあダメだと俺は思う。お前さえいればいい、なんてよく言うけれど、それではきっと生きていけないから。世界は二人だけで出来ているわけじゃないのだから。
確かにこれは、ただの俺の個人的な考えだ。これを手放しに受け入れろとは言わねぇよ。絶対的に正しい考え方だとは言わねぇよ。
ただ、それでお前が一度立ち止まって自分の行動を省みてくれるのなら、それで充分。今高瀬に必要なのはきっと、ほんの少し立ち止まることだから。そうして尚、自分の行動が正しいとお前が言うのなら 、その時はまた受けてたってやるさ。
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