Arcadia | ナノ
「…こんな顔晒しやがって」
「は?顔?」
「お綺麗な御尊顔が隈で酷いことになってますよォ」
…何こいつ超うぜぇ。
つーかこいつが座ってんのに何で俺は立ってんだ?そもそもそれが気に食わない。まぁ長居するつもりはないから良いんだが。それでもやっぱり気に食わない。
「お前以外の役員共は授業出てるってのによりによってお前がいない。にも関わらず書類はわざわざお前が持ってくる」
「……」
「意味わかんねぇよ。今の生徒会はどうなってやがる?」
へぇ、あいつら授業出てるのか。てっきり授業免除特典を使って転入生に付きっきりなのかと思ってた。
まぁ確かに意味わかんねぇよな。俺は今まで他の役員に比べて基本真面目に授業出てたからな。せっかく高い授業料払ってるんだから授業受けなきゃ勿体ないだろ。それにこいつに会うの嫌だったから風紀への書類は全部宏紀に任せてたし。
「どうもこうもねぇよ、通常運転だ。締め切りを破ったのは悪ぃと思ってる」
「……」
「もう帰るぜ」
油を売ってる暇はない。
これ以上ここにいたら良くないことが起こる予感しかしねぇし。
くるりと背を向け扉へと向かう。刹那、ぐん、と手首が引っ張られて。いつの間にか背後に迫っていた峰岸に、あっという間に壁へと抑えつけられた。ダン、と音がする程勢いよく壁にぶつかったせいで寝不足の頭が激しく痛み、顔が歪む。
「…っにしやがるてめぇ!!」
「てめぇこそ何してやがる。こんな事で不覚とってんじゃねぇよ」
「このっ…離せ!」
峰岸が強いと言ってもそこまで劣っているわけではないはずなのに、拘束された手首はピクリとも動かない。片手だけでこんな力ってどんな馬鹿力だよ。日頃の不摂生のせいか、上手く力の入れられない俺にも問題はあるんだが。
ギリギリと手首にかかる力が増していき、痛みに眉間にしわが寄る。こんな状況にも関わらず、至近距離に迫る碧眼がやっぱり綺麗でちょっと感動した。
「最近馬鹿みてぇな噂をよく聞くぜ。ぶっ飛んだ生徒会長様は毎日毎日ヤりまくってて欠席してるんだってなァ」
「…だからなんだ、てめぇには関係ねぇよ」
「こんな隈が出来るまでヤっても足りねぇんなら、俺が嫌というほど満たしてやろうかァ?」
するり、と目許を撫でられて肌がぞくりと粟立つ。
気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い…!
意味わかんねぇよ馬鹿なこと言ってんじゃねぇと睨みつければ、峰岸は笑って手を離した。
くっそ痛ぇし。手首赤くなったし。
「もっと抵抗しろよな、俺じゃなかったら喰われてんぜェ」
「うっせぇ馬鹿力。赤くなっただろこの野郎」
「お前それやめろよ、隙だらけ過ぎ」
は?何言ってやがる?と赤くなった手首を見ていた顔を上げれば、ちゅっと軽いリップ音。何かが唇に触れた感触と、視界いっぱいに広がっていた何かが離れ、それが峰岸だと気づいて何をされたか理解する。え、と目を見開く俺の前で、峰岸はにやにやと笑っていた。
「ペナルティーな」
「は!?」
「あと2回締め切り破ったら抱くから」
「はぁぁああ!!?」
ちなみに次はディープだぜ、とまだにやついてる峰岸の足を思いっきり踏みつけてやってから奴の部屋を飛び出す。
もういいもういい!長居は不要だってわかってただろ!?あぁもうだから嫌だったんだこいつと話すのは!!
「おい瀬戸!明日朝8時に生徒会室行くからな!」
逃げるように飛び出た部屋の主の声が後ろからかかった。そのとんでもない宣言に思わず振り返る。扉を開けて俺を見る奴の表情からは、もうふざけた色は抜けていた。
「直々に視察しに行ってやるぜ。通常運転とやらをなァ」
「な…!」
「じゃあ明日な」
それはまずい、非常にまずい。
思わずピシリと硬化した俺を見て色気たっぷりに笑った峰岸は、そのまま部屋の中へと消えていった。
え、ちょっと待てまじで?どう考えてもまずい、あんなん見られたもんじゃない。
だがしかし再びあいつを呼び出す気にもならず、と言うかなんて言い逃れするのか見当もつかず。結局俺は、そのままふらふらと生徒会室へ戻ったのだった。
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