Arcadia | ナノ
「―――っ!!」
俺以下3人が咄嗟に耳を塞いだ。ちなみに爆睡していた2人は吃驚してイスから転げ落ちている。
喋っている間にくそ長い話は終わり、いつの間にかプログラムは進行していたらしい。顔を壇上に向ければ、そこに立つ男がこちらを向いてにこりと笑っていた。
さぁ――――出番だ。
『第109期北上学園高等部生徒会』
その声が響き渡ると共に、俺以外の座っていた4人が立ち上がる。彼らの顔が引き締まるのがわかって自然と口角があがった。
―――あぁ、いい感じだ。
ちらりと双子を見れば、弟と視線が合った。俺の視線を受け止めて軽く頷いた後、彼は兄へと抱きつきにいく。行ってくるね、そう片割れに告げた後輩が歩き出したのと、彼の名を呼ぶ声が響くのは同時だった。
『庶務、2-S 菱川瑠佳(ヒシカワ ルカ)』
姿を見せた途端に再び歓声が沸き起こる。心配そうにそれを見ているもう1人の後輩の頭を撫でると、困ったようにこっちを見上げた。
「しっかりしろ、大丈夫だから」
「…会長先輩」
『書記、2-S 菱川瑠依(ヒシカワ ルイ)』
「ほら行ってこい」
トンと軽く背を押してやれば、その綺麗な顔に緊張と不安を滲ませて、しかし片割れの元へと急ぐように壇上へと足を動かし始めた。弟だけしか見えていないようなその様子に、思わず笑みが漏れる。すると、それを見ていたらしい稲嶺がむっとした顔をした。
「かいちょーって双子ちゃんには優しいよねぇ」
「美人だし可愛いからな」
「俺だって美人ですー」
「節操なしは嫌いだ」
「げぇ」
『会計、3-S 稲嶺誠二(イナミ セイジ)』
「誠二行っきまぁーす」
慌てたように俺から離れ、歓声に応えるようにひらひらと手を振って歩く姿も、最早見飽きたというか見慣れた。美人なのは認めるけど、どっちかというと美形って感じだよな。あまり女性的な要素はない。そんなことをつらつらと考えていた俺の肩に、白く細い手が乗った。
「次は俺だな」
壇上をまっすぐに見つめる作り物のように端正な顔が、視線はそのままにふわりと笑った。
あぁ、綺麗だ。
「お前は文句なしの美形」
「拓巳に言われたくないよ」
『副会長、3-S 一条宏紀(イチジョウ ヒロキ)』
「向こうで待ってる」
ぽんと肩をたたかれた後、ふわりと甘い香りが通り過ぎる。宏紀の登場に一段と湧く生徒たち。欠片も動じず、颯爽と歩く姿まで綺麗なのは流石といったところか。
長かった、と思う。
でもここまで来た。
やっと―――やっと舞台に立てる。
舞台は整った。
後は、俺が舞台に上がるだけ。
『会長、3-S 瀬戸拓巳(セト タクミ)』
―――――最後の一年が、始まる。
*prologue END*
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