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ぐりむさんへ
総長×会長







「…なにしに、きた」



扉を開いた瞬間、ぎらり、苛立ったように睨まれて苦笑する。
まるで手負いの獣だ。いや、確かに手負いなのは事実か。



「お前が怪我したって聞いたから」
「ちっ、あいつら余計なことを…」
「みんなお前のことが心配なんだよ、総長さん」
「別に大した怪我じゃない」



そっと隣に腰を下ろす。拒絶されないのはわかってる。
視認できる怪我は切れた唇くらいか。ならばと珍しく後ろについていない手を握ると、びくりとする体。じとりとした視線と共に顔がこちらを向いたので、傷のついた唇にちゅっとキスを落とした。



「心配くらいさせてくれ、恋人だろ?」
「…お前だからこそ見られたくなかったんだよ」
「お前のことなのに俺だけ知らないなんて嫌だ」
「忙しいだろ会長様は。心配させたくない、だせぇし」



むすっとしてそっぽを向く姿に喉を震わせる。かわいい、なんて言ったらもっと拗ねるだろうから口には出 さない。まあ気づいてはいるんだろうけど。

そろりとワイシャツの袖を捲れば顔を覗かせる真白い包帯。白く痛々しいそれに眉を寄せると頭にキスが降ってくる。顔をあげれば至近距離に端整な顔。



「見た目ほど酷くはねぇよ」
「へぇ?」
「心配すんな、お前を抱くのに支障はない」



切れた唇をぺろりと舐め上げる恋人。
それににこりと笑って応え、包帯を柔く握ってやる。



「ってぇ!」
「そうだな支障はなさそうだなぁ」
「いっ!ちょ、おま!」
「無理そうなら俺が騎乗位でもしてやろうかと思ったのになぁ」
「え、ちょ、まてまてまって、待ってくださいお願いします!」



するりと離れた俺の手を、一回り大きな手が掴む。
情けない顔を晒してこちらを見る、地域最強と謳われる男。必死な様子にニヤリと口角をつり上げた。



「支障ないんだろ?」
「でも騎乗位はしてほしいです」
「もう無茶はしないか?」
「その約束はできない、かな」



こいつがしくじって怪我する度に、毎回毎回繰り返されるやり取り。守れない約束はしてくれない。わかってるけど、せめて言ってくれるだけでも、と思うのは俺の我が儘だ。
こんな風にアホみたいな条件を提示してまでこじつけたい約束。無理なのは、わかってる。それでも好きなんだから、離れられもしないのだから、そう願うのは仕方ないだろう?



「ごめんなぁ、いつもいつも心配させて」
「…だけど、心配さえできない方が、もっと嫌だ」
「ん、今度からはちゃんと言うから」



だからお願いだから、騎乗位してくんない?
そう言って上目使いでこちらを見てくる姿に苦笑する。

あぁ―――仕方ない、この男に惚れてしまったその時から、きっと俺の心配はつきないのだ。
ならばせめて、こいつも俺から離れられないくらいに惚れさせてやろうじゃないか。そしてヤってる最中に 口約束を取り付けてやる。
覚悟しろよ、そう呟いて、首筋へと噛みついた。





―――――
TwitLongerより
Twitterでの2013年お年玉企画でリクエストして頂きました



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