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小林さんへ
不良×平凡







冬の寒空の下、学校の屋上。吹きっさらしの体感温度が信じらんない感じになっているそこに、なぜお昼を食べに来なきゃならないのか、一般性の塊という異名の自分にとっては全くわからない。ここで食べるようになってもう2年になろうとするが、正直未だに理解できていない。



「弁当は?」
「はい、持ってきたよ。唐揚げ入ってる」
「よっしゃ愛してるぜ!」



そう、つまり、今目を輝かせて俺からお弁当を受け取った男と付き合ってそろそろ2年が経とうとしているということだ。ツンツンに立った金色の髪に耳に沢山ピアスを付けて、制服とはなんぞやと問いたくなる程に着崩されたこのThe☆不良に告白されたときは、正直驚きを通り越して最早信じるという選択肢は全くなかった。

きっとなにかの罰ゲームなんだろう。ならば、断らずに当たり障りなく付き合って、期限かなにかに達したらすぐふっていただこう。それが双方にとって一番幸せ。
なんて考えていた俺は、すぐに考えを改めなければいけない事件に巻き込まれる。



『あいつに手ぇだすんじゃねぇぞ!』
『いいぜぇ?俺らはてめぇさえボコれれば満足だからなぁ!』
『あいつに手ぇだしたら、殺してやる…!』



喧嘩なんて、ガチな殴りあいなんて、初めて見たんだ。
縛られて呆然とする俺の目の前で、こいつは複数の人間によってぼこぼこにされていった。俺がいくら叫んでも、喚いても、暴れても、乱闘は、いや一方的な暴行は止まらなかった。地獄のような時間。何も抵抗せ ずに暴行を受け続け、崩れ伏す嘘の恋人。
そして全てが終わったあとに駆け寄った俺に、こともあろうかこいつは柔らかく笑ったのだ。
あぁ、お前が無事でよかった―――と。






「お前ってさ…ほんと、馬鹿だよね」
「あ?なに言ってんだ今更」
「いやぁ、俺のことほんと好きだよなぁと思って」



そう言って笑えば、唐揚げを頬張っていた強面の顔がぽかんと固まった。そしてすぐにカアァッと真っ赤になるのを眺めながら卵焼きを口に運ぶ。
学校の誰もが恐れる不良様々だけど、残念ながら俺にとってはこんな間抜けな顔も日常茶飯事。決して珍しいものじゃない。



「あ、今日卵焼き上手くできた、はい」
「ん、あぁ…超旨い。ってそうじゃなくて!」
「ん?なに?」
「おおおおま、おま、そんな可愛いこと言うんじゃねぇよ!弁当食いたいのにお前喰いたくなっちまうだろ!午後腹減るわ!」



ほんと、俺に関しては頭のネジが何本か緩んでるんだから困りもの、なんて。
ぎりぎりと箸を握り締め、俺か弁当かの選択で葛藤している恋人の手をそっと握る。馬鹿みたいな握力で箸を折られちゃたまらない。



「いいんじゃない?喰えば」
「は?てめ、なに言って」
「午後は二人でサボっちゃお」



にこりと笑い掛ける。からんと箸が落ちる音。ぎらりと光る鋭い双眸。
まぁ、こんな寒々しいところでお昼を食べるなんて自分の常識範囲外のことを許容して、更にはこんなところでいかがわしい行為に及ぼうとしている時点で、俺も大概こいつにイカれているのだ。
視界いっぱいに広がる青空を眺めながら、そんなことを考えた。





―――――
TwitLongerより
Twitterでの2013年お年玉企画でリクエストして頂きました



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