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嵯峨野さんへ 長谷のお話







『俺が、第108期生徒会長の瀬戸拓巳だ』



壇上でそう言った会長の姿が、今でも目に焼き付いている。
高校に上がったとしても、結局は何も変わらないと思っていた。昔から続くこの学園の因習は、脈々と受け 継がれていくのだ。変化なんて、起こりやしない。
そう信じて疑っていなかった俺にとって、高校の入学式に颯爽と表れたあの強烈に鮮やかな存在は、簡単に 心を荒らしてくれた。見事に掻っ拐われたのだ。



「よ、長谷。元気か?」
「あ、会長、お疲れさまです」



その時からずっとずっと憧れていた。同時に遠い存在だとも思っていた。自分には決して手の届かない彼方 の人。
ならば、せめて、なにかの役に立ちたい。彼に見えないところでも力になれるならば、そうしたい。そう 思って俺は風紀委員になったはずだった。
そう、それなのに、いつの間にかこんなにも近い存在になっていた。会長が気軽に声をかけてくれる風紀委員は、委員長と副委員長、そして俺だけ。



「書類ですか?言ってくだされば取りに行ったのに…」
「いや、お前には他の仕事があるだろ」
「別にこいつじゃなくてもいいだろうがよ、電話しろよ瀬戸」



最近、会長は風紀室によく来るようになった。
用件は書類提出と情報収集。そして多分、もうひとつ。



「いや、長谷じゃなきゃダメだ」
「はァ?なんでだよ」
「ある意味俺は長谷に会いに来てんだって最近気づいたんだ。なんかこいつ癒されるんだよ…タイプは全然違うけど蓮に通ずるものがあると思う」



そう言って、会長が俺の頭をわしゃわしゃとかき回す。俺の方が背が高いってことは気にしないことにしたらしい会長は、最近本当に俺を構い倒しに来るのだ。

会長が俺を“後輩”として慕ってくれてるのは知っている。
それは純粋に嬉しいことだ。嬉しいの、だけれど。



「ちょ、会長くすぐったいですよ。委員長の目が怖いし」
「んー?気にすんな気にすんな、大丈夫だから」
「まぁ、委員長のことは気にはしてませんけど…」



近くなりすぎて、どうしようもなくこの人の魅力に気づいてしまう。惹かれてしまう。
だけど、そろそろ不味いんだ。メーターが振り切れそうで―――男惚れが、憧れが、あらぬ方向へ前進するの は、きっとすぐそこの未来。



(まぁ、その時は、覚悟してくださいよ)



頭を撫で回しながら笑う憧れの人。きっとライバルはごまんといる。

だけど諦めるつもりなど欠片もない。
だって仕方ないさ。
この人の近くにいて、その魅力に抗える人間など、いるわけがないのだから。





―――――
TwitLongerより
Twitterでの2013年お年玉企画でリクエストして頂きました



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