学校関連50題 | ナノ

突然に触れた。柔らかくて温度があって、でもぼんやりとしかわからない。なにしろいきなりのことだった。近すぎてピントが合わなかった彼の目からは何も読めない。しかし、数えるほどの経験でこれがキスであることはわかった。



「…なにしてんの」



右肩に置かれた手と腰に回された腕。その温度が居心地悪い。自然と下がった声のトーンにも沖田は動じない。



「なんとなく」
「発情期かって」
「どうせならもっと女子っぽい反応してくだせぇよ、きゃ〜とか、なにするの〜とか」
「なんだそれ」



自分からしておいてさらに要望とは。眉を寄せながら、女子高生の唇は高いぞ、とトーンを変えずに脅すと、かわいくねぇと返ってきた。文句言うならキスするな。未だに肩に添えられたままの沖田の手を払う。簡単には取れないところがさらに腹立つ。むきになって手首を掴んで離せば逆に手を握られてしまった。これで私が沖田の肩に手を回せば舞踏会スタイルの完成だ。あ、ちなみにここ笑うところです。私はピクリとも笑いませんが。



「なに考えてるの」
「いやぁ、誰か来ねぇかなって」
「は?」
「少しでも敵は排除したいんで」
「戦ってんの?」
「まあ、そんなとこでぃ」



ちなみに今のかわし、笑うところです。もちろん私は笑いませんが。スパイ映画の主人公がパーティ会場で女を抱き締めるふりをしてターゲットを見張るシーンを想像して少し愉快になった。この放課後の教室には緊張感の欠片もないが。窓から入る夕日に照らされて抱き合うなんてロマンチックで、それこそ映画にあってもおかしくはない状況だと言うのに。



「誰も来ないと思うけど」
「まあ、そんなこともありまさぁ」
「いい加減離してよ」



返事はない。ただ、腰に置かれている腕の重みが増した。離さないということらしい。ポーカーフェイスと相反する態度に訳がわからなくなる。



「離してほしければもっと抵抗すりゃあいいじゃないすか」
「あんたが喜ぶんでしょうそれ」



不敵に笑うも、陥落まではもう少し。






「高校生だろうが恋は戦争」が副題
高校生の駆け引きを書いてみたかったんです


130207


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