心臓が暴れている。どくどくという音が巡って、もしかしたらこんな音が聞こえてしまってるんじゃないかと思ったら、そんな近くにいるんだと尚更意識して余計に顔が熱くなった。耳元を擽る吐息に、腰と背中に弛く回された腕に、意識を持っていかれる。目をぎゅっと瞑ると、朗らかな笑い声が聞こえた。恐る恐る見上げると、その手に頭を撫でられる。優しい手つきに、落ち着いたとともに少し情けなくもなった。 「ほんまに恥ずかしがりやなぁ」 真っ赤な顔だとか、あーだとかうーだとか言葉にならない声をあげてるとこだとか、ダメだなあ。違うんですよ、全部柔造さんがかっこいいせいなんです。そんなことでも言えれば、また違うんだろうか。まあ、言えてたら最初から恥ずかしがりだとは言われないだろうけど。 「あ、の、そろそろ放してください…」 「あぁ、堪忍な」 軽く頭を叩くように撫でて、弛んだ力。ほっとするような、でもほんの少しの名残惜しさが交じったような感情で息をこっそりと吐き出す。まだ距離を取ろうと、半歩、後退りする。と、いきなり起こったぐらつきに、わっと声をあげた。そして気づけばまた逆戻り。 「柔造さん…!」 「なんや、名残惜しなってもうて、」 「…!」 「その、も少しこのまんまでもえぇか?」 肩口に埋められた額から伝わる温度は温かい。その優しい温度のせいか、再加速した鼓動も少し治まった。それでも苦しくて苦しくて堪らなくて胸いっぱいに息を吸い込んだ。柔造さんの、においがする。 「…拗ねますよ」 「はは、もう拗ねとるやろ」 口ではそう言いながら、柔造さんから見えない唇には笑みが浮かぶ。それすら見透かすように笑うから、私は敵わないなぁ、って思い知って背中に腕を回した。 11.12.06 初めてのぎゅう 12月は柔兄強化月間ですね! ■ |