私の家は、職場である京都出張所にかなり近いところに位置している。駅の方面まで向かう途中には必ず出張所の前を通る。 今日は久しぶりのお休みで、買い物に出かけるところだった。そして例の出張所の前を通り過ぎる時、上司の姿を見つけた。 「あ、柔造さん」 「おぉ、名前。出かけるんか?」 「はい、久しぶりに買い物行こうと思いまして」 それじゃあ、と一礼して歩き始めた。ら、ちょい待ちい、と後ろから制止の声がした。何かなぁと思いながら、はい、と応えて立ち止まる。 「名前、ほんまにその恰好で行くんか」 「え、恰好、ですか?はい、そのつもりですけど…」 「あかん」 「えぇ…?」 服、変だったのかな…。自分の格好を改めて見てみる。白いシフォンブラウスにレースの襟がついた赤いカーディガン、ベージュのショートパンツに黒のニーハイ。際立っておしゃれではないかもしれないけれど、久しぶりの買い物だしそれなりに気を遣って選んだ。変、か。 「変ですか?それなりに気使ったんですけど…」 「いや、変やないで。けど、それはあかん」 それ、と指差されたのは、足元。え?更に首を傾げる。 「ニーハイ、ですか?」 「おん」 「だめですかね?」 「それはあかんやろ…」 「具体的にどうだめですか?」 男の柔造さんに尋ねるのもどうかと思ったけれど、なりふり構ってられない。 尋ねると少し考える素振りをしたあと、柔造さんが口を開いた。思わず、ごくりとつばを飲み込む。 「足出しすぎや。素足よか脚冷えんでえぇけど逆に危ないわ。一人で出かけんのやろ?痴漢にでも会うたらどないすんねん」 え、その『あかん』…なの? しかも上司に痴漢に遭う心配をされるなんて。なんだかすごく複雑な気持ちになりました。 11.1208 なんかおかんな柔造さん… ■ |