夏も盛りの8月となれば、正午を過ぎても暑い。ダラダラと流れる汗を拭いながら、屯所までの道程を歩く。右手には大江戸マートのビニール袋。歩く度にガザガサと鳴る。うるさいなあ、とまでは思わないけど。がさがさ、がさがさ。中サイズの袋いっぱいに詰められた食料が窮屈だと訴えているみたいだ、と思ったらなんだか面白かった。今日は少ない方で暑さに死にそうな私にとってはありがたい限りだ。毎回これくらいならいいのに。 あともう少しで屯所に着く。着いたら休みたいところだけど、晩御飯の準備が…と、考えていたら、通りかかった甘味屋の中に見知った姿を見つけた。…確か今は見回りのはずだ、けど。 「…沖田さん?」 「なんでィ」 「あの、今って見回り中じゃないんですか?土方さんに見つかったら怒られますよ?」 「ここの旦那が怪しい行動をしてやしてね。緑のう○こ作ってんでさァ」 「普通に抹茶ソフトクリーム作ってるだけじゃないですか。お店の方とソフトクリームに謝ってください」 「はい、抹茶ソフトお待ちー」 「どうも」 「って沖田さんが頼んだんですか」 呆れながら、抹茶ソフトを見遣る。おいしそう、なんだけど…沖田さんがああ言うからそう見えてきた。なんか複雑。いや、違う、断じて違う。うん○なんかじゃない。 と、必死に頭から下品なものを追い出そうと努力していると、その抹茶ソフトが目の前に現れた。 「ほれ」 「……は?」 「毒味しやがれ」 「え、毒味って…いいですよ」 「いいから、ほれ」 「いや、ちょ、」 結局口に押し込まれたソフトクリーム。やけに満足げな顔の沖田さん。悔しいことに、抹茶ソフトは美味しかった。 口の周りについた抹茶ソフトを右手で拭う。ん?右手?あれ、確か袋…、あれ沖田さんもいない。 慌てて店の外に出ると、見知った隊服の後ろ姿、目立つ栗色。と、右手にソフトクリーム、…と、左手に買物袋。がさがさ、がさがさ。 慌てその左隣りに追いつく。上司に袋を持ってもらうなんて、恐れ多い。というか、沖田さんの場合後で何されるかわからない。 「沖田さん、それ私の仕事ですから…」 「あんまうまくねェな、これ」 「は、はい?」 「あんた、これやりまさァ」 「いや、それより沖田さん、袋いいですから、ん」 開いた口に無理矢理突っ込まれたソフトクリーム。落ちないように手で持って沖田さんを見上げる。沖田さんが、帰ぇりますか、と年相応に笑った。思わず目を見開く。 なんか沖田さんが優しくて男前に見えた。違う。きっと暑さでおかしくなってるだけなんだ。私も沖田さんも。冷えた舌先がそう諭したような気がした。 11.0924 ほんとは8月中に書いててたんですがあげ忘れてました ■ |