あーあ、学校行きたくねぇや。沖田がつぶやいた気持ちには同意だ。しかしよく考えると大学生という身分は、自分の履修次第で朝行く時間が違うし、午後から始まる日だってある。そう考えると、どの学生の誰よりも、いや、世の中の誰よりもお気楽な身分なような気がする。のんきに歯を磨きながら、鏡に映りこむ寝起きの沖田を見る。 「ひどい寝癖だよ、いつもだけど」 「そっちこそひでぇ顔でさぁ、いつもだけど」 歯ブラシを動かす手が止まる。顔が引きつったのが分かる。というか、鏡に映ってる顔は目が笑っていない。いや、でもこれもいつものことだ。いつも言われている。そうだ、今に始まったことじゃない。そうして落着けようとすればするほど、眉間にしわが寄っていった。いつもいつも失礼なやつだ、自分はいい顔だからって。再開した歯磨きの手つきが荒くなる。 「沖田、学校行きたくないんだっけ?一生寝かせてあげよっか?」 「まぁまぁ朝は穏便にいきましょうや」 誰のせいだと思ってる。水を口に含む間に、沖田は鏡から出て行った。背後からかさかさとフローリングと裸足のすれた音がする。その間にも沖田へのイライラは募る。でも、私の方が一つ年上なんだ、大人になってやろう。しょうがない。水を吐き出すと口内に清々しいミントが残った。 「…そうだね、朝はすっきり清々しくいきたいもんね」 「え?あぁ、そりゃあそうですけど俺がトイレ行く前に大便は勘弁してくだせぇ」 おい、誰がいつ腸内の話した。『大便は勘弁』の不必要な語呂の良さにさらに腹が立つ。 「沖田のばか、くそ野郎」 「大便だけに?」 「座布団口に押し込んでやろうか」 寝起きの沖田は無駄にうるさい。 13.0717 ■ |