迷惑になるから、って遠慮してたけど、気付いた時には3コール目だったんだからしょうがない。繋がって声が聞こえた瞬間は、泣きたくなった。 「もうだめだぁ…」 ノート類の広がった机に突っ伏して目をつぶる。手には通話状態の携帯電話。開口一番の弱音に、は?、といかにも訳わかんねぇと言いたげな疑問詞が返ってきた。暫く黙ってみる。すると心配そうで迷惑そうな、いや、そうじゃなくて、迷惑そうに装った心配そうな声が名前を呼ぶ。 『どうした?』 「…私ね、」 『…、おう』 「落ちると思うんだ」 暫し沈黙。本日二度目の、は?、が、鼓膜を揺らす。じわりと視界が滲む。吐き出してしまったら、いやに現実味を帯びてしまったような気がして。ぐすっと鼻を啜って、それに気付いた電話の向こうが慌てるのを契機に、抑えていた涙腺は崩壊した。わかってるのに、迷惑だって。でも、止まらない。 「どうしよ、模試、どうやってもB判定とれない」 『……』 「これじゃ、落ちちゃう」 その後の言葉は嗚咽に塗れて繋がらなかった。電話からは何も聞こえない。それはきっと、ひとしきり泣いて、落ち着くまで。昔から要は私が弱音を吐いて泣き出すと、ぶっきらぼうなくせに泣き止むまで傍に居てくれた。泣くな、とも、泣きたい時は泣け、とも言わない。ただなんと声をかけていいのかわからないだけかもしれないけど、私にとってそれが何よりありがたかった。 『落ち着いたか?』 「……うん」 『その、なんだ…大丈夫だから』 「うん」 『心配すんな』 「…うん」 『不安なったらかけてきていいから』 「え…いいの?」 『おう』 「でも、迷惑じゃ」 『気にすんなって。ほんとお前は昔っから遠慮してばっかだな』 要が励まそうとしてくれている。それが伝わってくるから、なんとかなるような気がしてきた。そうなると少し気恥ずかしい。子供みたいに泣いてしまったことが。心強いだけで前を向けるなんて、単純な私は、みたいではなく子供なのかもしれないけど。 『だいたい祐希とかアホザルより頑張ってるだろ、お前』 「…そうかな」 『あいつ等のがよっぽど心配だって…』 ふふ、と笑いながらまた少しだけ泣きそうになったのは秘密の話。 (20110615) 志望校変えようかなあとか考えながら思い付いた話 そういえば要というか君僕は初めて書きますね 今更ながらアニメ化おめでとーう! ■ |