old log | ナノ
偶然隣の席になる前から気になっていた。見た目が好み…ってまあそれも無きにしもあらずなんだけど。内輪とどっちかっていうと騒がしく仲良くやりながら、そのくせ授業中なんかは睫毛を伏せていたり、不安定ってか儚げってか、なんかほっとけない。これでただ授業がたるいとか眠いとかだったりしたらかなり恥ずかしい。わざとだったらとんだ小悪魔だ。
そんな俺は気になる隣の席の子と日直だったりする。日誌の最後のコメント欄を埋めながらも、隣の席で顔を伏せる彼女をちらちら伺わずにはいられない。二人で書かなきゃならないなんていうこんなめんどくさいシステムが今は有り難いばかりだ。




「書き終わった?」
「いや、もうちょい」
「…もう、坂田くんさっきからそればっか。ほんとに書いてる?」




呆れたよう笑って覗き込もうとする彼女に、実は書き終えてたりする俺はどうしようかと考えていると、グッドタイミングで教室のドアが開く。入って来たのは担任で、俺らを見るなり、呆れたように微笑んだ。先程の彼女の笑顔と被る。




「お前ら日誌まだかー」




まだ掛かるなんて嘘っぱち説明しようと口を開いたら、ちょうど声が重なった。普段より上ずった数トーン高い女の声。振り向くと担任から目を逸らさず説明を続ける女子生徒。わかったから、そんなに必死になるな、と落ち着かせる担任の声がやけに遠くに聞こえた。彼女の火照った頬にばかり目がいった。いやに女々しかった。今日早く帰らないとならなくてさ、これから帰るから机の上に置いといて、と手を振って去った担任の背を見つめてから力が抜けたように椅子に腰を下ろした。からかってやろうと思ってニヤつきを抑えて振り返ったら、そんな考えはすぐに吹っ飛んだ。てっきり照れて惚けていると思った彼女は、いや、てっきり担任の背を見送ったと思ってた彼女は、力なく目を伏せて机を見つめていた。実際は机さえ見えていなかったし、ましてや俺は視界に入ってすらいなかった。それでも目が離せなかった。
暫く経って顔を上げた彼女は笑っていた。諦めを含んだ嘲笑だった。




「やだなあ、わかってるのに」




事実は物証を以って突き付けられるほど実感するものはない。だから普通に過ごしていれば背けられる事実を突き付けられたは、突き落とされた。あの担任は学校に居る間は婚約指輪を付けずにいる。帰る時になって付けるらしい。




「坂田くん、不毛だよ」




そう力なく告げたあとも笑おうとする強がりに手を伸ばす。何の真似?と不平を言い、眉を顰めながらも背中に回された腕は微かに震えていた。
不毛なのは彼女か、俺か。






(20110407)
先生が好きな主人公と主人公に気がある坂田。


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