old log | ナノ
遠目から見て似ているな、なんて思っていたらやっぱりあの子だった。しかも質の悪いことに金髪の学生に絡まれている。前に一回、外国人に道を尋ねられてしどろもどろな覚束ない英語で説明しているのも見ている。多分あの子は人を引き付け易いんだと思う。良い意味でも、もちろん、そうでない意味でも。
ごちゃごちゃと耳に入る雑音を切り抜ける。走るのはめんどい。でもこの子の為なら、めんどいのも嫌じゃない。不思議だ。




「…走れる?」
「ち、千種くん」




あまり足が早くない彼女の鞄を取り、その時一瞬顔が見えた。日本人は困った時も微笑む。不思議だけど、でも現に彼女はそんな顔をしている。少し、少しだけ声をかけた男の気持ちがわかったような気がして、こっそり溜息を吐いた。多分この子は、人というより男を引き付けやすいんだ。




「逃げるよ」




照れ臭そうに聞こえた斜め後ろのありがとうを聞こえないふりをして、後ろの喚き声から逃げる。
くすりと小さな笑みが聞こえた気がした。




瞑目する群青



(20110116:きみの手首は細い)

title {藍か}


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