※ハルヒとキョンが性転換



 今日も涼宮さんは苛々している。かつかつ、と男の割に細くて綺麗な指先で彼の定位置である団長席のテーブルに規則的な音を立てていた。
 涼宮さんの視線を追うとその先には彼女がいる。つまり僕と彼女が話をしていることが、向かいあってボードゲームに興じていることが、彼女が僕に笑いかけることが彼の機嫌を損ねているのだろう。
 そんなに嫌なら僕を望まなければ良かったのだ。
 超能力者を、謎の転校生を望まなければ良かった、もしくは、女子生徒を望めば何一つ問題はなかった。
 彼女も、僕に笑いかけなければ良いのに、一緒にボードゲームに興じたりしなければ良いのに、喋らなければ良いのに、好意という物を抱かなければ良いのに、神の「鍵」なんかじゃなければ良かったのに。
 そうすれば、連日のように発生する閉鎖空間にて神人と闘うことも、彼女の笑顔を愛しいと思うこともなかったし、ともすれば彼女に思いを伝えることだって出来たはずなのに、どうして全てうまくいかないのだろう。
 彼が神でなければ、彼が超能力者を、謎の転校生を望まなければ、彼女が神の「鍵」でなければ良かったのにと思うのに、どれか一つでも欠けていたら、この感情も、焦燥も、出会うことすらなかったのだと知っている。

 だから僕はいつまでも作り物の笑顔を貼り付けている。

 好きな人に何一つ伝えられず、この気持ちすら存在していなかったことにして。





faker


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