※ハルヒとキョンが性転換





 黒で白を挟む、白が黒に変わる。たったそれだけのことだ、単純すぎるルールだ。

「僕はですね、いろいろ考えているんです」
「何をだ」

 パタン、パタパタ。
 白が黒を侵食していく。

「涼宮くんのこととか……あ、角貰いますね」
「む……で、ハルヒコがどうしたって?」

 中央から伸びる白のラインが黒に染まる。
 パタパタ、パタン。

「最近の彼は精神的に不安定です、おそらく、今も」
「つまり不機嫌なのか、はた迷惑な奴だな」

 普段なら部屋の隅で長門がハードカバーに目を通しているのだが、今日はコンピ研にでも顔を出しているのだろう。朝比奈先輩はハルヒコに連れられて商店街に繰り出している。不機嫌だというハルヒコと一緒、朝比奈先輩は大丈夫なんだろうか。
 白が黒を、黒が白を侵食する音、そして私と古泉が喋る声だけが、この空間を支配している。わかりやすい、わかりやすすぎて寒気がする。

「どうして、彼の精神が不安定なのか、わかります?」
「わからん」

 パタン。
 黒が白に少しだけ染まった。


「この状態が問題なんですよ」
「…? あ、角」

パタパタ。
「簡単に言ってしまえば、僕と貴女が二人でいるのが問題なんです」

 ピタリ。
 手が止まる。侵食活動も一時停止、しかし直ぐに再開する。

「どういうことだ」
「先日、涼宮君から釘を刺されました」


 本人にその意思は無く、どうも無自覚のようでしたがね。
 古泉の声が響く。パタパタ、パタ。

「僕は、崩壊は止めたいと思っています」
「何が言いたい」

 お前、ボードゲームは苦手なんじゃなかったのか。
 こんな時だけ、

「僕は、貴女の気持ちを知りたくない」
「古泉、」
 パタパタ、
 盤面は、ポツポツと白が残っている、それ以外は黒。

「ハルヒコなんて関係ない、私は、」
「それ以上、言ってはいけません……いつ涼宮君が帰ってくるかわかりませんから」

 パタ、
 水滴が盤面に落ちる。
 盤面に黒が広がる。

「僕は、貴女に会えて良かったと思っています。この世界に、感謝しています」
「古泉、」
「だからこそ、この世界を壊したくない………わかってください」


モノクローム



 膝の上で握りしめた手は力の入れすぎで白くなる。
 真っ黒な視界に、私は真っ直ぐに古泉を見ることさえかなわない。



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