※望准
※先生は経験豊富
※男子生徒×望の描写有





 むせかえるような色濃い性のにおいに気分が悪くなった。この部屋は閉塞的で、足を踏み入れるのを躊躇ってしまう。部屋の奥から響く嬌声に、僕は耳を塞ぎたくなった。

「もっと…そこ…あ、あああっ」
「先生、先生っ!」

 それらは全てが遠い世界の出来事のように現実味がない。ただ自分の感覚が麻痺しているだけかもしれないが。
 先生が自室に人を連れ込むようになって随分と時が経った。今日のように男子生徒だったりすることもあれば、日によっては女子生徒だったり、行きずりの男でも女でも、先生は全てを受け入れる。

「あっああ、なかっ…いくっ…いっちゃう…!」
「くっ…うっ…先生っ」
「あっあぁあああぁッ!!」

 ぼう、としている内に行為は終わったらしい。荒い息遣いが耳に残る。気持ち悪くて吐き気がしそうだった。
 部屋の奥から相手の男子生徒が出てくる。多分一年生だ。彼は僕の姿を認めるときつく睨みつけてから去って行った。

「くどうくん、いるんでしょう?」
「あ…」
「入ってください」

 部屋の奥からの声に、意識を引き戻されるような感覚だった。部屋に一歩足を踏み入れると、青臭いにおいが立ち込めるそこは気持ちが悪い。その部屋の中央に、先生はいやらしく座っていた。

「ずっと、聞いていたんでしょう?」
「……」
「そんな怖い顔をしないでくださいよ」

 くすくす、と何が楽しいのか先生は笑う。僕は無言で先生の身体に付いた精液などを濡れたタオルで拭っていった。やたら熱っぽい声を出す先生を無視して、ただひたすらに先生の身体を清めていく。

「のど、渇きました」
「…今、水を持ってきます」
「こっちでいいですよ」

 ふふ、と先生がいやらしい笑みを浮かべたと思えば、先生は僕の下肢に手を伸ばす。慌てて抵抗すれば、先生はつまらなさそうに息を吐いた。

「意地悪」
「…先生」
「ならこっちは?」

 今度は抵抗する間もなかった。唇と唇が重なって、口内を犯される。唾液を全て奪われるのではないかと錯覚するほどの激しい口づけに、僕は目眩を覚えた。

「…ごちそうさまです」
「っ…は、…」

 ねぇ久藤くん、と先生は僕を誘う。抱いてあげましょうか、と。貴方に抱かれるよりも、貴方を抱く方が楽しそうです、と。

 僕はそれを全て無視して、先生の身体を綺麗にする。先生はこんなにも怠惰でだらしなくて、男も女も誘い込んでは酷いことをするようなどうしようもない人。それでも僕は先生の側を離れない。そして、先生との性的接触はなるべく避けている。他の人と同じでは駄目なのだ。一度でも先生と関係を持ってしまえば、先生は僕への関心を無くすだろう。だから僕はこのままの距離を保とうとする。その気持ちを、先生は知らない。



 結局はただ先生に自分を見て欲しいだけなのに、こんなアプローチの仕方しか僕は知らない。


 僕がここにいる理由、先生を拒み続ける理由、それらを全て、先生は知らない。
(でも久藤くん、私があなたを自分の側に置く、その理由をあなたは知らない)





あなたは知らない






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望准/怠惰でだらしない望の相手をする准くん


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