めるめると指先で携帯電話をいじる彼女は、私なんかとは全然違う。

 私はよく喋るけど、彼女は全く喋らない。
 私は背が高いし、自分で言うのも何だけどかなりスタイルもいい。美人だとよく言われる。
 それに比べると彼女は背も低いし幼児体型だし、凄く可愛らしい。似ているのは、二人そろって口が悪いということくらい。

 こんなに近い距離に居るにも関わらず、会話なんて交わしたりしない。
 ぴろりん、と新着メール。差出人はもちろん彼女。

『このままサボるぞ』

 次は私たちの担任の授業だった。どうせ今日も自習なのだから、受けたところで意味はないし、もちろん理由はそれだけではない。

 彼女は担任のことが嫌いなのだ。

 わかった、とだけ返信して、手早く荷物をまとめる。と言っても、荷物なんてそんなにたくさんあるわけじゃないから直ぐに教室を後に出来た。



 二人ならんで歩くと酷くちぐはぐな感じがする。趣味も嗜好も違う。だけど、何故かよくメールを交わし、時間を共有した。
 そうして私は彼女のことをだんだんと理解するようになった。

 メールでは嫌だ嫌だと貶しているけれど、彼女は本当は自分の担任が好きなんだと思う。

 彼女のメールボックスには既に送信された担任宛の暴言メールが大量に残っている。
 そして、彼女のメールボックスには彼女の言葉が詰まっている。
 基本的に一度作成したメールを消去したりしない彼女。横から覗きこんだら、たくさんの未送信メールが保存されていた。
 こっち見てんじゃねーよ、とすぐに批難のメールが来たけれど、無視をした。誰宛か、なんて直ぐにわかった。彼女がわざわざフォルダを分けてまで保存するような相手を、私は一人しか知らない。

 素直になればいいのに、と漏らすと、余計なお世話だヘンテコパーマ、と一蹴。私ははぁ、と一息吐いて、彼女の反対側に座りこんだ。



未送信メール



 今日も、担任宛の未送信メールが増えているのだろうか



―…―…―
カエレちゃんはこんなんじゃない気がする
カエレちゃんと芽留ちゃんと、仲が良かったらいいな
という妄想です


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