その細い両腕を片手で纏めて診察台に押しつけると、明日も早いんでしょう、と咎める声。じゃあ軽くしておくよと口だけで信憑性に欠ける答えを返すが、どうせ向こうも口だけの抵抗なのだからお互い様だろう。
 ん、と鼻にかかった息が洩れて、軽いついばむようなキスが深い口づけへと変化する。快感に眉尻を下げる弟の手首をその場にあった包帯で縛り上げると、小さな抗議の声が上がった。

 軽くするんじゃなかったんですか

 ぷは、と唇を放すと直ぐに睨みつけられて、やれやれといった所だ。そんなこと、いつ言ったか?と笑うと、弟はまた軽く絶望しているようだった。



 * * *



 明日の朝、起きられなかったら一体どうしてくれるんですか。

 診察台に横たわる弟が、ぶつくさ文句を垂れ流している。手首の戒めはそのままで、後処理も何もしていない白濁やら体液やらで汚れた肢体は酷く卑猥だ。
 すっかり疲弊しきった弟の腕に手を伸ばして、その戒めを外してやる。情事の最中に激しく動かしたためか、結び目が固くなってしまっている。
 それをほどくのに悪戦苦闘していると、唇を塞がれた。というよりも寧ろ噛み付かれた。
 互いに舌を絡めて、甘噛みして、口腔を探りあう。唇を放すころには二人とも息が上がっていて、その濡れた瞳は誘っているように思われた。
 包帯を解く手を放し、後孔に指先をずらす。先程まで使っていただけあって、あっさりと指が入った。もう疲れたから嫌だと言う弟を無視し、診察台にしがみつくような体勢を取らせ後ろから挿入すれば、快楽に弱い弟から発せられるのは喘ぎばかり。
 明日の朝も早いのに、と息も絶え絶えに言うが、先に誘ったのは望の方だろうと耳元で囁けば身体をぴくりと跳ねさせた。

 明日のことなんて、適当にごまかしてしまえばいい。

 そう囁いてやると、どうやって、と弟は困惑した声を吐く。

 何でも良いさ、それらしく言えれば。
 例えばどんな風に、
 …目覚まし時計の電池が切れてて寝坊したとか、
 そんなベタな、

 後ろから弟の最も感じる所を思い切り突くと、一際大きな声を上げて達した。それに伴って強く収縮する肉壁に自身を締め付けられ、自らも達してしまう。

 弟はどうやら意識を手放してしまったらしい。はぁはぁと荒い息を吐きながら、私は弟の耳元に唇を寄せ、小さな声でおやすみ、と囁いた。





電池が切れた




(翌朝、本当に時計の電池が切れていて、二人そろって遅刻した、なんていう話があったりなかったり)



―…―…―
命望も好きだよ
あの兄弟はエロいよ
二人とも同じ声だなんて…


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