(僕が見たいのは貴方の笑顔で、)
目を開ければ、そこに映るのは見慣れた天井。こうして先生の部屋で目を覚ますことにも違和感を覚えなくなった。顔を横に向ければ、柔らかな黒髪がそこにあった。
(今日は何をしよう)
ぼんやりと、微睡みの中で考える。またあの映画を見ようかな。先生は、同じ映画の同じ場面でいつだって泣いてしまうのだ。ぐずぐずに鼻をすすって、ぽろぽろと涙の粒を溢して。それを見て僕は笑う。いつも通りの光景が、愛しくてたまらない。
(ねえ先生、)
こうして隣に貴方の温もりが居座っていることが、どんなに嬉しいか貴方は考えたことがありますか。身体を横に向けて、先生の身体に腕を回してぎゅっと抱き締める。んぅ、と身動ぎをするものの、すっかり安心仕切っている彼が愛しい。
ああ、貴方がいれば、それだけでいい。そんな風に思う僕は、相当に末期で、馬鹿で、馬鹿なくらいに幸せだ。
(生命の誕生も神様の加護も、宇宙の神秘だって、どうでもいい)
(僕が見たいのは、)
宇宙の神秘はどうでもいい