放課後の図書室、私と彼以外の誰もいない空間、日が窓ガラスを突き破って差し込む。
そんな窓際の一番奥に置いてある机で、いつも彼は何かしらの書物に目を通している。
「久藤君は何時までここに?」
「あ、もしかしてもう下校時刻ですか?」
「いえ、そういう訳では無いのですが…」
ならもう少しここにいます、と彼は控えめに漏らし、また書物に目を落とす。
その様に見惚れている自分がいることに気付いて、別に悪いことをしている訳でもないのに目を逸らす。そのまま、図書室の利用状況を日誌に書き込むために、カウンターの方へ逃げるように移動した。
カウンターで頬杖を付きながら日誌に向かいあう。本日も異常なし。そのままぼんやりと窓の外を眺める。ゆっくり日が落ちていく。
と、いきなり左腕を掴まれて思考が引き戻される。
「――先生、」
見ると、久藤君がそこにいた。近づいていたことさえ気がつかなかった。
「先生、どうしたんですか、ここ」
彼が、私の左腕を強く握る。手首に巻いた包帯の下で傷が開いたのだろう、白に朱が滲んでいく。
「……」
「先生、」
彼の綺麗な手が、ゆっくりと私の腕を暴いていく。
手首に引かれた幾本もの線が、生々しく視界に映る。
「…どうして、先生」
「ぁ…」
彼が私の手首を引き寄せて、そこに唇を落とした。
「っ…!」
「痛いですか?」
彼の目を見れない。彼の視線が痛い。
「先生、」
何故死のうとするんですか、と彼の声が鼓膜に響いた。
鼓膜に響いた
―…―…―
准←望
本当に死にたがりな先生^^