※晴千里
「あ。」
千里の声。どうしたの、と問えば「切っちゃった。」
見れば、指先の方に細い線が走っていて、それを辿るように血の珠が浮かんでいた。
「あー、紙で切ると痛いんだよね」
どうやらコピー用紙を整理している時に切ったようだった。「痛いなあ。」声はちっとも痛そうには聞こえないけど、千里が言うならそうなんだろう。
「手、だして」
「ん。」
素直に差し出された手を取る。小さい、それに細い。簡単に折れそうだな、なんて考える。傷はあまり深くはないみたいだった。じわりと滲んで、表面張力で保たれていた血の雫が臨界点に達したのだろう、指先を伝っていく。それを、何の躊躇いもなく、舌で舐めていた。
「はるみ、」
「ん」
「くすぐったい。」
「がまんして」
しっかりと、たっぷりと唾液で千里の指先を濡らしていく。あー、今の千里の顔、なんかエロいなぁ。そんなことを考えている私はもうだめかもしれない。
千里の指から口を離す。指先がてらてらと光ってなんだか卑猥だった。
「はるみ。」
「なに」
「口の端、血が付いてる。」
言ってすぐ、千里の舌がそれを舐め取った。
「血の味がする。」
「あたりまえでしょ」
血の味のキス。千里の味。
真っ赤なその色も、あなたの色なら染まっても構わないと思う。あぁ、私って本当にばかだなぁ。ばかみたいに千里のことがすきなんだもん。
朱に交われば