真っ白だ。
 とにかく真っ白だ。
 どうしようもないくらいに真っ白だ。

 だからなんだと言われてしまえばそれまでだが、机に向かってペンを手に取れば思考が拡散して霧散してもう何も手につかない。先生へ、と書いて、少し間があいて、僕は、と書いて、ぐしゃぐしゃと紙を丸めてごみ箱へ。先程からその繰り返しで、本当にどうしたと言うのだろうか。
 たかだかラブレターだ、と考えると、ラブレターという響きに何か胸が詰まるような想いがして、頭の中が真っ白になるのに、反してごみ箱の中には大量の紙屑。物語を口にするのはあんなに簡単にすんなりと出来るのに、何故こうも上手くいかないものなのか。
 少なくとも自分は文章を書くことは苦手ではなく、むしろ得意な方であると自覚していたのだが、その認識も改めなければならないらしい。はぁ、と小さく溜め息を吐くと、胸の詰まりも更に蓄積していくような気がした。

 せんせいへ、

 そこまで書いてペンを置く。目を瞑って深呼吸をして、紙に視線を落とすが字面に変化はない。

 すきです、

 紙面をじっと睨み付けた後にたったそれだけの言葉を綴ると、すっと胸の詰まりがなくなった気がした。気がしただけかもしれないが。

 ふう、と一息吐く。机の上の紙切れを眺める。字が汚い気がするなぁ。歪んでいるようにも見える。…やっぱりこれもだめだ。

 そうやって理由をつけて、目の前の紙をごみとして扱う。結局のところ、この手紙が完成することなどないのだ。この想いを伝えることも。

 くしゃくしゃに丸めた紙屑を、ごみ箱に向かって投げる。が、これまでにあまりにもたくさんの紙屑を投げ入れていたせいで溢れかえったごみ箱は、とうの昔にその許容量を大きく超えていた。




ごみ箱の中には



大量の紙屑と、抑え込んだ感情


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