※絶望少女たちしか出てきません




眼を閉じる。
先生の声が子守唄のように聞こえる。やわらかくて綺麗な声。教科書を読み上げるその声をBGMにして、私は眼を閉じている。授業中の居眠りなんて、やっぱり普通なのかなぁ。


眼を閉じる。
布団の中は温かくて真っ暗で居心地が良い。先生、今日は何時くらいに帰ってくるのかな。そろそろ部屋の掃除を始めなくちゃ。あとお昼ご飯の準備も。


眼を閉じる。
教卓の中は狭くて暗いけれど、先生がとても近く感じる。実際近いのだけれど。眼を開いて先生をじっと見つめた。先生、私に気付いてください。


眼を閉じる。
授業中でも脳内はパラダイス。休み時間に芳賀くんが青山くんのお茶を勝手に飲んでる所を見ちゃったんだよね。間接キスじゃない。青山くんってそういうの意識しちゃいそう。あと先生も。久藤くんとかと間接キスとかしたら真っ赤になってるんだろうなー。あぁ先生可愛い。


眼を閉じる。
そしてすぐに開く。先生、授業時間を無駄にするのはやめてください。そしてこの文章の現代語訳がこうなる理由を、きっちりと文法的に説明してください。ほら、早く。


眼を閉じる。
ワカラナイ。マリア、むずかしいことキライ。先生、もっとカンタンにしてヨ。外に遊びに行ってもイイか?ねぇ先生、マリア、じっと座ってるのあきたヨ。


眼を閉じる。
すみませんすみません、私のような人間が皆さんと一緒に授業を受けているから皆さんが退屈してしまうのですね。ああ先生、気を悪くなさらないでください。全部私がいけないんです!


眼を閉じる。
本当、この国の授業って退屈。決まりきった形に当てはめてるだけじゃない。溜め息でそう。先生もつまんないし、最悪。次の授業まサボろうかしら。


眼を閉じる。
どうやら疲れてるみたい。目頭を指先で軽く押す。授業中の内職にも限界があるなぁ。ごめんなさいね、先生。でも少しは見逃してくださいね。人妻も大変なんです。


眼を閉じる。
左腕の打ちつけた所が痛んだ。眼を開いて先生の方を見れば、やっぱりお兄さんとそっくりだった。ああそうだ、今日は病院に行かなきゃ。ついでにこのあいだ頼んでた参考書も借りてこよう。


眼を閉じる。
今みんなはどんなことを考えているのかなぁ。先生のことかなぁ。そういえば今日は綺麗に桜が咲いてるし、入道雲も凄く大きい。紅葉は真っ赤で雪も積もりそう。眼を閉じるだけで、こんなに楽しいなんて。ねぇ、せんせい。




眼を閉じる




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