※お薬の話
※臨也さんがちょっとアホの子かもしれない







 あとはシズちゃんがココに来るのを待てば良い。ちゃんとおもてなしする準備も出来たし。
 と、乱暴に呼鈴を連打する音が響いた。一回でちゃんと聞こえるって、と苦笑して、あるものを手に玄関へ向かう。

「いらっしゃいシズちゃん!」
「イザヤ手前っ……んぅっ!」
「はい、先手必勝っ!」

 ドアの向こうに立つ彼が殴りかかる前に、手にしていた小瓶の中の液体をシズちゃんの口に流し込む。俺の素早さがあってこその所業だね。突然のことにシズちゃんは目を見開いたが、口を手で塞いでいたらそのまま液体を飲み込むように喉が上下した。

「手前、なにを、」

 げほ、と咳き込むシズちゃんは、既に息が荒い。それだけで顔がにやけてしまう。

「ちょっとお薬を盛ってみたんだ。ほら、シズちゃんって殴ったり蹴ったりどころかナイフもスタンガンも効かないじゃない?」
「てめ、ふざけ……っ!」
「ん、もう効いてきたかな……流石は即効性だね」

 がたん、とその場に崩れ落ちたシズちゃんに笑みを向ける。俺を睨み付けるシズちゃんの視線にゾクゾクした。

「安心して、毒じゃないから。ただの媚薬ってやつだよ」
「イザ、ヤ」
「流石のシズちゃんでも性欲には勝てないかなって思って」

 薬のせいで身体が熱いのか、シズちゃんは乱暴に首元のタイを外した。シズちゃんのために準備していたものは寝室にあるので、とりあえず場所を移動しようとシズちゃんの手を取った。ら、

「クソが……っ」
「え、なにシズちゃ、……っんん!」

 いきなり押し倒され、唇を奪われた。薬のせいで我慢が効かないのだろう。シズちゃんの舌が酷く熱くて、火傷するんじゃないかと思った。

「は、……あちぃ、」
「薬が、ぁっ……効いてるね、シズちゃん」
「で、手前が言ってる薬ってのはこれのことか」
「……え」

 上着のポケットに入れていた予備の瓶が、いつの間にかシズちゃんの手元にあった。もしかしたら先の薬がシズちゃんに効かなかったりするかもしれないと思って準備していた、先の薬よりもさらに強い媚薬。ヤバい、シズちゃんの笑顔が怖い。

「あは、は、……何の話?」
「手前は俺に薬を盛った。つまり手前も薬を盛られたって構わねえっつう覚悟があったんだよな、イザヤ君?」
「嫌だなぁ、シズちゃんったら……とりあえずそれ、返してよ……っ」
「うるせえ」

 反論虚しく、小瓶の中の液体を無理矢理口の中に流し込まれた。飲み込んだらヤバいとわかっているのに、マウントポジションを取られた状態で鼻と口を押さえ込まれてしまえば抗うことも出来なかった。喉が焼けつくように熱くて、その熱が直ぐに全身に広がるような感覚。ヤバい。少し動いただけで服が身体のあちこちを擦ってしまい、それさえも快感として拾い上げてしまう。

「ほぅらイザヤ君、もうここ勃ってきてんぞ」
「や、シズちゃんっ……」

 緩く勃起しかけている俺のそれにシズちゃんがぐりぐりと膝を押し当ててきて、それだけで達してしまいそうにビクビクと悶える俺をシズちゃんが抱き上げる。場所を変えようと動いてるのはわかるのだが、シズちゃんが歩く度にその振動が伝ってきて何も考えられなくて、目を瞑って快楽に耐えた。がちゃり、ドアの開く音に目を開ければそこはどうやら俺の寝室で。どさりとベッドに身体を投げ出されれば、その衝撃がざわりと全身を襲った。

「用意周到だなぁ、手前は」
「んぁ、あ、や、なに……」

 口を開けば言いたいことだけじゃなくて甘ったるい言葉も一緒に出てくる。気にくわない。が、そんなことを気にしている内に、シズちゃんの視線は俺がシズちゃんのために準備していた諸々――玩具やビデオカメラや手錠など――に釘付けだった。あ、ヤバい、かも。

「俺に使うつもりだったんだろ? じゃあもちろん手前に使ったって、もちろん文句はねぇよなァ?」

 サングラスを乱暴に外し笑いながらこちらを見るシズちゃんの眼は、欲望に忠実な獣の眼だった。





Love drug!







2010.2.2


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