※??×臨也
※傷付いても笑うだけの愚かさには長けの少し前の話、臨也視点
※臨也可哀想かつ裏なので注意









 完全に失敗した。普段ならこんな失敗、するはずがなかったのに。
 何も見えないということは目隠しされてるんだろうなぁ、とぼんやりと思った。意識もなんだか靄がかかったみたいにはっきりしない。こんな風になる少し前の記憶として、後ろから羽交い締めにされて口元に何か押し付けられた記憶はあるから、おそらく薬か何か嗅がされたんだろう。場所は多分どこかの廃工場あたり。音の反響する具合とかからの憶測でしかないけれど。若干寒いので、コートは脱がされてるみたいだ。腕も縛られてて動かないし、本当、失敗した。俺にこんなことするのは誰だろうね。粟楠会の人たちとはこんなことにならないように気を付けてたから別だと思うけど、心当たりなんて有りすぎてどれから疑えばいいかもわからない。くそ、暴力は嫌いなんだけどなぁ。

「俺にこんなことするなんて、度胸あるね。俺が誰だかわかっててこんなことするんだ?」

 一応ここにいるであろう相手に向かって話しかける。まあでもこんな行動に出るのも人間ならでは、かな。なんて思っているけれど、相手はハァハァと息を荒げたまま何も喋らない。息遣いからして男だな。殴ったり蹴ったりしてくるかと思いきや、何もしてこない。何だよ、つまんないなぁ。怖じ気づいた、とかだったりしてね。

「ねぇ、聞いてる?」
「……が、」
「え?」

 男がようやく何か喋ったと思えば、いきなり冷たい空気が肌に刺さる。上着をたくしあげられたみたいだった。え、どういうこと。何も見えないから訳がわからない。

「君が誰かは知らないよ」
「は? ……っ!」

 突然胸に痛みが走った。乳首? を、摘ままれた? うそ、まさかこいつ、この男、。

「僕はね、ただ君が気に入ったんだ。ね、真っ白な肌だね。汚したいなァ」
「っ、……ぅあっ!」

 べろりと、生暖かいぬめった物が乳首を這う感覚に鳥肌が立った。気持ち悪い、嘘だろ。

「は、冗談、だろ?」
「冗談? 何がだい? ああ本当、綺麗だねぇ。ゾクゾクするよ」
「ひぅっ……っ!」

 男の舌が次にどこに来るかなんて、ぜんぜん予測もつかなかった。気持ち悪い。腹筋まで降りていた舌が、いきなり臍を舐め始め、思わず声が上擦った。確かにそこは、これまでシズちゃんとの行為で開発された性感体の一つではあった。丹念に臍をれろりと舐められて、びくりと体が反応してしまう。

「こんな所も感じちゃうなんて恥ずかしい子だねぇ」
「は、やめ、ろ……っん、ひっ!」
「ああ、その声良いよ!」

 じゅるりと唾液を刷り込むみたいに舌を動かされて、不本意だが声が上がってしまう。気持ち悪い。カチャカチャとベルトを外される。パンツを下着ごと下ろされた。嘘だ、やだ、止めろ。

「あれぇ、ここちょっと起ってるよ? お臍舐められて気持ちよかったのかなぁ?」
「さわ、んな……っうあ!」
「ね、可愛いね。毛も薄いし、綺麗だし、君サイコーだよ」
「や、やだっ……っあ、あっ!」

 アンタはサイコーでも俺は最悪だよ、くそ。ぐちゅぐちゅと自身を上下に擦られて、涙が出る。視界を覆う布がじっとりと湿って気持ちが悪い。やだ、そんなところ、シズちゃん以外の誰にも触らせたことなんてなかったのに。

「ほうら、こんなにぐちゅぐちゅに先走り垂らしちゃって、エッチな子だね君は」
「やだ、嫌だ……っあ、やっ……っ!」
「嫌嫌言っちゃって、可愛いなァ」
「ひっああぁあっっ!!」

 何も見えないというのは厄介で、感覚が酷く敏感になっていて堪らない。全ての動作が唐突に訪れるせいで、我慢することが難しい。先端に爪を立てられ、耐えることも出来ずに達してしまった。男の笑い声が響く。無理矢理四つん這いのような体勢にされた。嫌だ、くそ。すると、え、……嘘だ、やめろ、後ろに、男の、舌、……!?

「ね、お尻の穴でも気持ちよくなれるんだよ」
「やだ、やだやだっ……さわんな、あっ!」

 ぬるりとした感覚が後ろに伝う。入り口の周りを舐め回されて、じゅるじゅると唾液で濡らされて、舌先が、中に侵入してくる。普段シズちゃんに慣らされていたそこは、簡単に男の舌を受け入れた。

「ん、ふ……、あれ、もしかして君、男の経験ある?」
「は、っ、やめろ、やだっ……、っ!!」
「お尻の穴ぐちゅぐちゅされて気持ちよくなっちゃう子なんだね?」
「ひっ、やだ、やだぁっ……っ!」

 男は舌から指に変更して、中をぐりぐりと探り始めた。言っておくけど、これまでこんなところ、シズちゃんにしか触らせたことなんてない。シズちゃんには「俺は男と経験ある」なんて言ってたけど、そんなの嘘だった。シズちゃんに会うときは前もって自分で後ろを慣らしていた。色々調べて、知識だけは持っていた。全部、シズちゃんにバレないためだ。バレないように、隠し通してきた。

「ねぇここ気持ちいいでしょ?」
「や、あ、あっ、ひ、あああっ!」
「そんなに我慢しなくても、すぐいれてあげるよ」

 散々中のしこりを弄られた後、ぐぷ、と音を立てて指が引き抜かれる。代わりに宛がわれた熱に、目眩がした。嫌だ、嫌だ嫌だ嫌だ……っ!

「ほら、暴れちゃ嫌だよ?」
「は、っ、あ、なに、……うあっ!」
「あはは、乳首も気持ち良いんだねぇ! エッチな子だなぁ!」

 唐突に胸の突起に爪を立てられれば、上げたくもない声が簡単に上がる。こっちが怯んだその隙に、男の熱が押し入ってきた。

「あ、は……君のナカ、キモチイイよ……?」
「やだ、……いやだ、っ、あ、ああっ!!」
「ここ、気持ち良い所だったね? 淫乱だなぁ」
「ひっ、や、あ゛、ああっ、んっひっ!」

 ぐちゅぐちゅと中をかき混ぜられて、前立腺ぐりぐり刺激されて、声が止まらない。びくびくと内腿が痙攣する。涙も止まらなくて、もうどうしようもなかった。

「っ、はっ……、中に出すよ?」
「ひ、や、やだっ! やだぁっ!」
「ん、っ……!」
「ひっ……っ!!」

 どぷり、中に出される感触が気持ち悪い、吐き気がする。嘘だ、こんなの。俺の中で達した男はまだ満足していないのか、勝手に前の方を触ってきた。いきなりの刺激につい中を締め付けてしまうと、男の物が再び硬度を増す。ぐぷ、と中に出された精液が音を立てた。吐く、吐いてしまう。そう思ったけれど口から漏れるのは嗚咽と嬌声だけで。

「ねぇお尻の穴でイッちゃうのってどんな気持ち?」
「あっ、はっ……っひ、んっ……っ! やだ、……ちゃん、たすけ、」
「なに? 彼女の名前? ああそれとも彼氏かな? 健気だねぇ」
「っ……ふ、あ、やだっ……っ!」

 聴覚が狂うかと思った。むしろ全部狂ってしまえばよかった。ぐちゃぐちゃに突き動かされて、散々喘がされて、中に出された。カシャ、とシャッター音が聞こえたが一々反応するような気力もなかった。



 そうして俺は、意識を飛ばしていたようだった。目が覚めた時にはもちろん男の姿はなく、腕の拘束や目隠しも外されていた。服は着せられていたが、中の物は多分そのままだろうと思う。立ち上がるのもやっとだったけれど、これ以上この場所にいたくなかった。投げ捨てられていたコートを掴み、羽織ると暖かくて泣きそうだった。


(シズちゃん、)


 何となく。どうしてか、はわからなかったけれど。とにかく彼のことが頭を過った。互いに嫌いあってる、身体だけの関係を持った彼のこと。


(シズちゃんに、会いたい)


 ただ抱き締めてほしいと思った。俺を抱くときの、少し躊躇ったような優しい腕で、ただ抱き締めて欲しかった。
 気付けば……俺の足は彼のアパートに向かっていた。







傷だらけでも、未だ気付かず









2010.3.4
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モブ×臨也、裏


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