※ぬるい性描写あり
※静臨
――甘いキスなど、したことがない。
「ねぇシズちゃん、キスしよっか」
セックスの合間に、戯れのように臨也が口を開く。
「キスだよ、ねぇ……ん、あ、そこ……、うん、ん、あ、は……っ」
その言葉の続きを聞きたくなくて臨也の中に埋め込んだ自身をぐっと動かせば、案の定臨也の声が上擦った。その唇に指を押し当てると、臨也の赤い瞳が揺れる。
「は、あ……っ、嘘だよ……っ、キスとか……ばかみたい……は、っ」
「はっ……そっくりそのまま返してやるよ」
甘さなどない。そんなものを求めるような間柄ではない。向かい合った臨也の肩口に噛みつく。ぐ、と歯を突き立てると臨也の眉間に皺が寄った。甘ったるさなど、必要なかった。
シャワーを浴びて部屋に戻る。ぐったりと疲れきった様子で眠りこける臨也の横に腰をおろした。すう、と小さく規則正しくその薄い胸を上下させる臨也のその、形の良い唇に指を押し当てる。肉付きの悪いこいつの身体だとは考えられない程にその唇は柔らかくて思わず触れる指先に込めた力が抜けた。
甘さの要らない関係。互いに依存せず、ただこうして身体だけを求める。俺もこいつも、それ以上は望まない。それだけで、よかった。
はずなのに。
静かに眠る臨也の頬に、触れるか触れないかくらいのキスを落とす。頬の次は額に、その次は瞼に、鼻に、顎に、耳に。そして、唇に。
臨也が眠っている時にだけ。起きている時には出来ないとわかっているから、こうして今だけの口付けを臨也に落とす。そんなものをこいつは求めていないと知っているから。
この、触れるか触れないかの距離が、酷く遠くに感じられた。
君が眠りについたとき
(甘いキスなどしたことがない、)
(こいつは、そう思っている)
*――*――*
(リアタイSSログ)