※静臨
※R18
「も、やだ、ばかあ……」
びくびく、と身体を痙攣させ、小さく頭を振って否定する様は見ていて愉快だ。その声を無視するように、手元のつまみを操作して音量を気持ち大きめにすればさらに臨也がびくついた。
「しずちゃ、やだあっ……」
「あ? 手前、ちゃんと聞いてんのかよ」
「やだ、やだ……うっ、ああっ、……!」
臨也の形のよい小さな耳には、大きめのヘッドホンが装着されていて。大音量で流れているのは、以前臨也とシたときにこっそりと録音しておいたものだ。臨也の首元に噛みつくようにすると、意図せずヘッドホンに顔が寄ってしまう。音漏れがひどくて、こんなに大音量ならばこちらの声は聞こえていないだろうと判断した。
「ふっ、うう……やだ、やだあ……」
聴覚を、自らの恥ずかしい声で支配されるというのはどんな気持ちなのだろうか。両腕はコードで縛ってしまっているので、今の臨也が自由に使えるのは視覚と、その口だけだ。しかしその口は、先ほどから意味のない否定を繰り返してばかりで。
そろり、と臨也が気付かないのをいいことに、腕を臨也自身に伸ばす。それまで触れていなかったにもかかわらず、臨也のソコは立ち上がり、てらてらと先走りで濡れていた。
「おい臨也……」
「あっ……、やだ、……!!」
「そうか、聞こえてねえのか」
ぐりっ、と先端を強く弄ると、ぼろりと臨也の瞳から生理的な涙が零れおちる。そのまま上下に手を動かして臨也自身を擦ると、ぐちぐちゃと卑猥な水音が響いた。……でも、これも臨也には聞こえていない。
ヘッドホンから音漏れしてくる喘ぎ声も、今の臨也に負けず劣らず相当に切羽詰まっていて。ゾクリ、と背筋が粟立った。
「やだっ……しずちゃ、んうう……っひ、あ……!! あっ、!」
『ああっ、あっ、シズちゃんっ、あっあっあああっ! やらぁっ……!!』
「しずちゃ、これっ、外し、」
臨也の言うところのこれ、というのがヘッドホンのことだというのは察しがついた。だが、そんなに簡単に言うことを聞いてやるほど臨也に対して寛容ではない。すっかり臨也の先走りで濡れてしまった指を後ろに這わせると、びくんと臨也の身体が跳ねた。そのままつぷり、と指を侵入させれば行為に慣れ切ったその穴は簡単に異物を受け入れる。ゆっくりと入口から少し入ったところにある臨也の性感帯をぐりぐりと押し上げ、そのたびにガクガクと震える臨也の細い腰を後ろから抱きすくめる。とその時、臨也の嬌声に、ぐすぐすと鼻をすする音が混じっていることに気付く。表情を覗いてみれば、先ほどの生理的なものとは明らかに異なった涙を浮かべる臨也がいて。
「やだっ……外してよぉ……っく、ふっ……」
「臨也……?」
「あっ、……っ、シズちゃんの、声……聞こえないじゃん、ばかあっ……!」
ぶち、と衝動のままにコードを引きちぎった。同時にヘッドホンからの音声が止み、臨也の荒い息が響く。
「ぅ……あっ、ばか……ばかぁ……しずちゃ、しずちゃんっ……あ、あああっ、ひっ……!」
「っ……!」
何度も何度も名前を呼ばれ、我慢が効かなかった。ぬちぬちと中を探っていた指を引き抜き、代わりに自らの硬く立ち上がったものを挿入する。背中からぴったりと密着した状態での挿入はより深く繋がり、ざわりとした肉壁の動きにもっていかれそうになるのを歯を食いしばってこらえる。
「うっ、あっ、きもち、い……からっ……しずちゃんの、きもちぃからあ……っ!」
「臨也、……は、」
「はっ、あ……ふぅ、んぅ……や、あああっああああ!」
ぐっと腰をぎりぎりまで引き、再び奥まで貫くという動作を繰り返していると、臨也の内腿がひくひくと痙攣し始める。ああもうすぐだ、と感じて、耳元で低く名前を呼んでやると、それにつられたのか臨也は甘い声をあげて達した。
「は、は……あう、シズちゃん……」
「ああ……手前、俺の声好きだもんなァ……?」
意地が悪いと思ったが、達したばかりで敏感になっている臨也の耳に息を吹きかけながら漏らせば、臨也は耳元まで真っ赤にさせて。
「うっ……は、……わる、い?」
「……いや、最高だ」
そんなことを言われたら、もう。
俺の言葉以外、こいつには聞かせたくないと、そう思った。