※静臨







「おい、朝だぞ」

 いや、もう昼と言った方が近い時間帯かもしれない。そろそろ起きやがれ、とベッドで眠りこける臨也に声をかける。いつからかもう覚えていないが、臨也は俺の横でも、ぐっすりと眠るようになった。夜中なんかには、人の胸に顔を埋めたりしていることもある。
 昔は、ただセックスと喧嘩だけを繰り返していたあの頃は、こんな日がくるなんて考えもしなかった。セックスで疲れ果て、気を失って、それでも朝起きたらベッドには臨也の姿は無くて。だから、今はただ、人の隣でグースカ眠りこける臨也の姿が、微笑ましくて仕方がない。

「しずちゃんの絶倫……」

 起きるのつらい、と寝ぼけた顔のまま、臨也がこちらを見る。髪の毛は後頭部で変な寝癖がついているし、何より涎の跡がついている。だせぇ顔だし、気が緩みまくってて、隙だらけだ。大きく開いた首元に視線をやれば、昨晩の情事の痕が色濃く残っている。後処理もせずに寝たんだっけか、とか考えていれば、寝惚けた臨也は俺の胸元に頭を寄せてきた。するりと細い腕が背中に回される。

「しずちゃんの匂い……」

 ぼそりと呟かれ、くんくんと犬のように人の首筋で鼻を鳴らす臨也に、なんとかなけなしの理性を保つ。

「しずちゃん、すき」

 ふわり、と普段の人を食ったようないやらしい笑みとは全くの別物の、柔らかい笑みをひろげて、臨也は人の首筋に吸い付く。寝惚けたままの臨也は、隙だらけで、好きだらけで、たまらない。頑張れ俺、理性を持て。

 臨也の標的が首筋から、顔面に向かう。鼻先の笑顔が俺を包んで、柔らかな唇を重ねた。ふに、と心地好い感触に、目を細める。以前は臨也が眠っている時にだけ、唯一その時だけに限られていた臨也へのキスは、今では愛を確かめあう挨拶のようなものになった。今でも少し信じられないけれど、俺たちは、恋人同士だ。

「おはよう、シズちゃん」
「ああ、おはよう」

 もうすぐ昼だけどな、と告げれば、臨也はまた、幸せそうに笑った。
 今日は何をしようか。
 外は、こんなにも良い天気だ。




君に告げる




(そうして始まる今日もまた、いい日だといい)





*――*――*
(♪君に告げる/スキ.マス.イッチ)
寝起きにデレる臨也さんマジ天使

2011.3.14


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