※本日、デート日和の続き
※裏注意











 スタッフロールが流れ終わり、館内の照明が明るくなると同時に俺は席を立った。隣の金髪野郎なんて知るもんか。そのまま爆発して死ねばいいのにとすら思う。カツカツとヒールを鳴らして早足で移動するのだが、慣れないヒールやスカートのせいで簡単に追い付かれてしまう。

「怒るなよ、臨也」
「怒るに決まってんじゃん。バカじゃないの」
「あー……そりゃ、まあ、謝るから」
「ふざけんな!」

 シズちゃんの頬をぱしんと平手で打つと、周囲が何事かとこちらを見始めた。だがしかしその叩かれた相手があの“平和島静雄”だとわかれば、皆がそそくさとその場から離れていく。

「……臨也」
「なに。悪いのはぜんぶシズちゃんでしょ」
「……まぁいい、行くぞ」
「は……? え、ちょっとシズちゃん、」

 ぎゅっと手を握られて、そのまま強引に引っ張られる。歩くスピードが早くて、着いていくのに必死な俺には口を挟む隙もなかった。







 シズちゃんに連れて来られたのは、まあ俗に言うラブホテルで。俺が反論する隙も与えずにシズちゃんはサクサク部屋を決めてしまい、そのまま連れ込まれる。

「信じらんない、シズちゃんのバカ!」
「悪かった」
「悪いと思うならなんでこんな所連れてきちゃうわけ?」

 そもそも、俺がこんなに怒っているのには理由がある。
 それは、映画を見ている時のことだ。館内の照明が落ち、真っ暗な状態で……この男は、俺にセクハラ行為を働いていたのだ。最初は手を握るとかその程度で、それには俺も文句なんてなかった。問題は、映画の終盤にかけてだ。
 いきなり、耳を舐められた。耳朶に歯を立てられ、舌を耳の穴に差し入れられて。握っていた手が外されたと思うと、直ぐにその手がスカートと靴下の間で露出している俺の太股に触れてくる。耳も足も弱い俺からすれば声を出さないように我慢するのも一苦労で、正直映画どころではなかったのだ。

「ばか、シズちゃんのバカ! 変態!」
「……」
「俺、シズちゃんとのデート楽しみにしてたんだよ? 堂々と人前を歩いて、普通のカップルみたいにデートするの、凄く楽しみにしてて、」

 口にすれば、簡単に涙腺が緩んだ。確かにシズちゃんとのセックスは大好きだけれども、セックスは別に自宅でも出来る。でもデートなんて、いつでも出来る事じゃない。

「ばか……シズちゃんのばか……知らない……」
「……悪かった」

 シズちゃんが、俺の涙を舐める。いや、一応化粧とかしてるからその行為は良くないと思うのだけれど。びっくりしてシズちゃんをじっと見つめれば、気まずそうにシズちゃんが口を開いた。

「その……手前が、……可愛いから、つい……」
「……え」
「……っ、我慢、出来なかったんだよ。悪いか」

 こちらに視線を合わせないまま、シズちゃんはボソボソと呟く。耳まで赤くなっているその様に、何故か先ほどまでの怒りがすっと抜けていくような気がした。ああもう、シズちゃんったら可愛い。ほだされているのはこっちの方だ。シズちゃんの両頬に手を置き、こちらを向かせてそのまま唇を重ねる。

「……シズちゃんったら、仕方ないなぁ、もう」
「臨也、」
「馬鹿馬鹿しくて怒る気も失せちゃったよ」

 せっかくホテルに入ったんだし、ね。よく考えたらこういうホテルに入る機会も滅多にない。シズちゃんの上に馬乗りになったまま、彼のシャツのボタンを一つずつ外し、露になった胸板に手を置く。

「……興奮してる?」
「……悪いか」
「ううん、可愛いなぁって」

 そのままの流れでシズちゃんの乳首を舌で舐めると、びくりと身体を揺らす彼が面白い。自分がこんな女の格好してるからかな、倒錯的な気分だ。すると、シズちゃんの手がするりと俺の足に触れてくる。内股の柔らかいそこを撫で上げられて、気持ちがいい。

「……臨也、」
「ん、シズちゃん……え、ちょと……」

 シズちゃんの手が、俺の下着を取り去る。スカートとか靴下は履かせたまま下着だけ抜くって、かなり恥ずかしい。そのまま緩く立ち上がりかけていた自身を握り込まれ、声が詰まった。

「……手前こそ、ここ、凄いことなってる」
「……ばか、っ、……」

 ゆるゆると手を上下に動かされて、簡単に立ち上がってしまった自身の先端に軽く爪を立てられれば、声を我慢するのも難しかった。先走りが溢れてきたのか、ぬるぬるとしたその感覚が気持ちいい。
 されてばかりというのも癪なので、シズちゃんのズボンのベルトを外し、シズちゃん自身を取り出して同じようにぐちゅぐちゅと上下に擦る。先にイかせた方の勝ちだとでも言わんばかりに互いに刺激しあって、それでもやはり先にされていたこちらの方がより早く達してしまった。

「ぁ、……はっ、……スカート、汚れちゃう、」
「……悪い、今の可愛い」
「え、っ、……ちょっとシズちゃ、んんっ……!」

 俺の白濁で濡れた指が、そのまま後ろの入り口を撫で上げ、つぷりと侵入してくるその違和感に思わず声が上がる。耐えきれなくて、上体をぜんぶシズちゃんに預けるように密着させた。精液だけでは足りなくて、引き抜いた指に備え付けのローションを垂らし、再び中を弄られる。左右両方の指のその広げるような動きに翻弄され、声を我慢出来ない。シズちゃんの耳元で喘いでいたら、シズちゃんは更に興奮したみたいだった。入り口に押し当てられた熱が、酷く熱くて火傷するんじゃないかって錯覚してしまう。

「……挿れるぞ、」
「ん、……んぅ、あ、ああ、っああああっ!」

 腰を上下に揺する度にスカートがふわりと揺れる。俺、女の子じゃないのに。このまま中に出されたら妊娠できないかな、なんて錯覚する、馬鹿みたい。俺が女の子だったら、もっと普通の恋人みたいに色々できたのかな。ぐちゃぐちゃと繋がった部分から音がして、気持ちがいい。シズちゃんも、俺が女の子の方が良かったんだろうか。

「……臨也、」
「あ、んんっ……シズちゃ、……っシズちゃ、んんっ、はっ、あっ……」
「……俺は、手前だからこんなことするんだからな」

 男だから女だからとか、関係ねぇ。
 気にしてるなんて俺は一言も口にしてないのに。普段は鈍感なくせにこういう時だけ勘が良いんだから。そんなことをシズちゃんに言われたら、俺は泣かずにはいられなかった。









 それから数日後。
 あの平和島静雄が黒髪の美女とデートしていた、という噂を俺は耳にする。堂々と人前でデートできるなんて、黒髪美女さんは羨ましいものだね。でも、こうして家で二人でごろごろべたべたしてる方が楽しいからいいか、なんて思う。当分の間、黒髪美女さんの出番はないみたいだ。








続・本日、デート日和








2010.3.18
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