※静臨




 おなかすいた、なんてシズちゃんがいうから、寝ぼけ眼をこすりつつも仕方なしにキッチンに立つ。
 とは言ってみたものの、シズちゃんのオンボロアパートの、中古で買ってきたやっすい冷蔵庫にそんなに大層な食材なんて入ってるはずもないし、IHなんてなくって未だにガスコンロだ。せめてもう少しマシな材料を入れておけと言いたいけれど、卵と玉ねぎがあっただけでも上出来だとほめてやるべきかもしれない。
 冷凍室には以前俺がまとめて入れておいた冷凍ご飯が2人前ほど残っていたはずだ、鶏肉も冷凍してたのがまだ少し残ってる。頭の中で簡単に献立を組み立てる。ちょっとお腹すいたってだけなら、こんなのでもいいかな。
 電子レンジに鶏肉と冷凍ご飯を放り込み、サックリ解凍。玉ねぎは薄くスライスし、片手なべに水をはる。カチカチ、とコンロに火をつけ、なべの中に玉ねぎと一口大にカットした鶏肉を放り込んだ。粉末のかつお出汁と、白だし、薄口しょうゆで軽く味を調える。解凍したご飯はざるにあげて、軽く水洗いし、よく水気を切ってから、なべの中へ。再び沸騰するのを待ってから、とき卵を落としてなべに蓋をする。簡単雑炊。個人的には味噌味にしたかったんだけど、なぜこの家には味噌すら置いていないのか。次来るときにはちゃんと買ってこようと思う。

「できたよ」シズちゃんと俺のと、2人ぶんの茶碗によそった雑炊を持ってテーブルへ。俺よりもさらに眠そうな声で、シズちゃんは「おー」とつぶやいた。
「なんなの、その態度」俺だって、眠いし腰は痛いし、それでもシズちゃんのためにかいがいしくもごはんつくってあげたのに!
 なんだか腹がたって唇をとがらせていると、「手前、たべねえの。うまいのに」なんて、なんにも考えてないような声で箸を動かしているものだから、何か言い返す気力もうせてしまった。

「おれ、手前のごはんすきなんだよなー」
「あっそ」

 晩御飯は肉じゃがたべたい、明日の朝はフレンチトーストがいい。なんて、ぼんやりとテレビをながめながら当たり前みたいにシズちゃんは言う。それ、今夜も泊まれっていいたいのかな。

 ぼんやりと時間は流れる。この、真綿で包まれているような柔らかくておだやかな時間が、俺はどうやら嫌いではないらしい。

「じゃあとりあえず」

 すっかり空いたシズちゃんの茶碗を下げるために手を伸ばした。シズちゃんの後ろ髪が跳ねている。顔くらい洗えよばーか。

「味噌買いに行こうよ、いっしょに」

 荷物持ちが必要だからさあ、なんて言えば、シズちゃんはそれが当たり前みたいに頷いた。





2011.3.12
なんかいちゃいちゃしたのが書きたかった。


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