●1/28 21:38
 臨也お手製だというご馳走とケーキを、臨也のマンションで食べるというよくわからない行動。だがしかしまぁ、料理もケーキも美味かったので文句は言わないことにする。

「あー……携帯どうするかな」
「人から電話かかってきたくらいで握り潰したりするからでしょ? 自業自得じゃない?」
「あ? どう考えても手前のせいだろうが。だいたい、手前の手口は一々回りくどいんだよ」

 不思議と、怒り狂うようなことはなかった。朝のあのイライラが嘘のようだ。まあそれもこの目の前の男の不器用さがあまりに可愛らしかったからなのだが。

「しかしなんつーか、ありがとな?」
「っ……!」

 わしゃわしゃと臨也の頭を撫でてやれば、臨也は一瞬目を見開き、そしてすぐに顔を真っ赤にさせた。その表情は普段ならば滅多に見ることができない類いのもので、それを見ることができただけでなんだか特をした気分になる。

「まあとりあえず明日は俺仕事休みだしよ、一緒に携帯買いに行くの付き合え」
「……なにその命令口調、俺の予定は無視?」
「ああ」
「……サイテー」
「とか言う割には手前、嬉しそうだぞ」
「……うるさい、ばか」

 口先では悪態ばかりを吐くが、耳まで真っ赤にしていては全く説得力がない。普段からこれだけ素直ならもっと可愛いのだろうかなんて思うが、臨也はこれくらいがいいのかもしれない。よく考えなくても、素直なこいつなんて気持ち悪いだけだし。

「……今なんか失礼なこと考えてない?」
「いや、素直じゃねえ手前が一番可愛いなって思っただけだ」
「……! ば、か……!」

 ああ、きっと臨也みたいなやつこそが、所謂"ツンデレ"っていうやつなんだろうか。今度狩沢達に会った時にでも聞いてみるか。とかなんとか思っていて、ふと気付いた。

「そういえばよ、俺、手前以外から誕生日、祝われてねぇ」

 思い返してみれば、朝会ったトムさんも何か俺に言おうとしてたし、セルティだってメールしてくれていたらしい。携帯が壊れているためわからないが、おそらく幽からも何か一言くらい連絡があったんじゃないだろうか。
 知り合いに会う度に、向こうが話しかけてくる度に、途中で遮られた。誰に? そんなのもちろん、この目の前の男にだ。

「……もしかして手前、自分一人だけで俺を祝いたかったのか?」
「っ……! ち、違う……!」
「……手前よ、」
「違うってば! 別に、シズちゃんを独り占めしたかった、とかじゃ、ないし……!」
「……」
「……シズちゃん?」

 何も言わない俺に不安になったのか、恐る恐ると言った様子で臨也はこちらを見上げてくる。……とりあえず、こいつ、めちゃくちゃにしていいだろうか。

「……えっと、シズちゃ……っ!」

 そう思ってからは行動が早かった。顎を掴み、強引に口付ける。息を奪うように、呼吸の一つ一つさえもが俺の物だと主張するかのような口付けに、臨也は最初のうちは俺の胸を叩いて抵抗していたが、次第に諦めたらしい。
 唇を離す頃には臨也の息も絶え絶えで、目尻にはうっすらと涙が浮かんでいる。ごくり、喉がなった。キッと睨み付けるその潤んだ硝子細工のような瞳に煽られたと言ってもいい。ひょいと臨也の体を担ぎ上げ、寝室へと向かった。もちろん臨也は抵抗していたが、こいつの抵抗なんて俺にしてみれば有って無いようなものである。一人用にしては馬鹿みたいにデカイベッドに臨也を放り投げ、その黒いシャツをひんむく。と、臨也が何か言っていることに気付いた。

「せ、せめてシャワー、浴びたい……!」

 臨也曰く、「今日は一日シズちゃんと追いかけっこしてたから、汗臭いし、嫌だ」ということらしい。首筋に鼻を寄せて確かめると、確かに汗の匂いだ。

「ね、シズちゃんもさ、汗臭いの、嫌でしょ……!」
「あー……そうだな……」

 慌てる臨也を後目に、そのままれろりとその首筋を舐めた。ひゃっ! と上がる高い声。確かに、汗の味がする。

「あのよ、臨也」
「なに……?」
「俺、今日が誕生日なんだよ」
「……知ってる」

 臨也の声が強ばった。恐らく、こちらが考えていることに気付いたのだろう。

「という訳で、手前は俺の言うことを聞く義務があるよなぁ?」
「……俺の誕生日の時は覚えてろよ……!」
「よしよし、わかった」

 とりあえず、シャワーは却下だ。汗の匂いが混じった臨也の体臭にすっかり煽られ、軽く勃起した自身を臨也の足に押しあてれば、臨也も観念したようだった。





●1/28 22:21
 くちゅくちゅと卑猥な水音が室内に響きわたる。頭上からは押し殺すような小さな喘ぎが聞こえてきて、それがこちらを欲情させているという事実には、きっと本人は気付いてはいないことだろう。

「こえ、だせよ」
「……、そこで、しゃべるな、!」
「今日は俺の誕生日だ」
「っ……! ふ、う……、は、ぁ……んンっ!」

 口にくわえた臨也自身からはだらだらと先走りの液が流れていて、それを残さず舐めとる。括れの部分を舌先で執拗に刺激してやれば、それがたまらないらしい。ひくりと内腿の薄い肉が震える様が愉快だ。袋を指で軽く揉んでやりながら竿の部分を舐めて、先端を吸って時折軽く歯を立てる。もうだめ、と頭上の声が切羽詰まるのを確認してから、そこへの刺激を止めた。そしてすぐに臨也の体を反転、四つん這いにさせて後ろの孔を指でなぞる。今まで全く触ってもいなかったというのに、その部分はヒクヒクと誘うように動いていた。

「本当、体は素直だよな、手前は」
「ひぅ……っ!」

 臨也の先走りで濡れそぼったその指は、思ったよりも簡単にそこへ埋まった。わざと臨也の感じる箇所への直接的な刺激を避けて指をぐにぐにと動かしていると、ゆらゆらと臨也の腰が動いていることに気付く。よく見れば、臨也はシーツに自身の先端を擦り付けていた。

「臨也くんよぉ……何勝手なことしてんだ?」
「ひっあアっ……! やっ、それ、やだ……!」
「やだじゃねぇよ」

 空いている方の手で、臨也自身の根元をぎゅうと握りしめた。臨也は頭を振って嫌がるが、それも気にせずに中に差し入れたままの指を激しく動かす。
 随分中が解れた頃合いを見計らって指を引き抜き、熱く硬くなった自身をそこに宛がった。先端で孔の周囲をなぞると焦れるような声が臨也からあがる。いい加減こちらも限界だったので、くぷりと先端を中に含ませたのを確認すると、両手でしっかりと臨也の腰を掴み、前立腺を思いきり抉るように角度を調節してそのまま一気に最奥まで力強く挿入した。

「ぃ、あぁああアッ……!」
「っ……!」
「や、ァ、うごか、な、でぇっ……! ひ、ぅアアッ!?」

 臨也の尻たぶが直接触れる感触で最奥まで挿入したことを確認すると、シーツがべったりと濡れていることに気付く。

「ハッ……手前、トコロテンとか……」
「い、わない、で……、あ、や、は、ぅあっ……!」
「ほんと、手前、可愛い……」
「ひっ……! 、あ、や、胸、らめぇっ……!」

 背中から覆い被さるように抱きすくめ、そのまま前に手を伸ばす。既に硬く尖った小さな突起を爪で引っ掻くと臨也からは高い声があがった。ゴリゴリと中を抉る腰の動きは止めないままでいると、感じすぎて辛いのか臨也の声は上擦り、呂律も回っていない。

「ふ、う、あ……あ、ああーっ……!」
「そう、いえばよぉ、俺、まだおめでとうって、言われてねぇんだよ」
「ふぇ、……? ん、んぅ……っあ、ひ!」

 中に入れたまま臨也の身体を起こし、座り込む。そして繋がった身体を向かい合わせにさせた。所謂対面座位ってやつだ。自分よりすこし上にある臨也の顔をじっと見つめる。だらしなく口の端から唾液を溢し、瞳はすっかり欲に濡れている。

「他の人から言われてない分、代わりに手前が言ってくれるんだろ?」
「ふ、あ、……」
「なあ、祝ってくれよ」

 臨也の細い腰を掴み、上に持ち上げて先端まで自身を引き抜く。力の入らない足で軽く膝立ちを強要された臨也は、ぷるぷると全身を震わせながら泣きそうにこちらを見た。

「幽とか、トムさんとか、セルティとか、門田……来良のガキ達もだな。なあ、祝ってくれるだろ?」

 くちゅ、とその細い首筋に吸い付き、臨也を見上げる。ああ、たまらない。

「っ、……おめでと、シズちゃん……」
「おいおい、俺のことそんな馬鹿みたいなアダ名で呼ぶのは手前だけだぞ。まあ兄貴とか呼ばれるのはなんか気持ちワリイから、名前呼びで勘弁してやる」
「っ、……! 、め、でと……ぉ、」
「ああ? 聞こえねえな」
「っ! ……、おめでとう、しず、お……あ、ヤ、あアアアッ……!」

 その言葉が聞こえてすぐ、臨也の腰を掴む手を離した。支えを失った体はそのまま重力に従い、最奥までずっぷりと突き刺さる。その刺激で再び臨也は達したようだったが、それを無視して何度も何度も引き抜いては落とし、抜いては落としを繰り返した。

「なぁ、まだ、足りねえ、よ……!」
「あ、アアアっ……おめでと、し、ずお…やぁ、っ、あ、しず、しずお……!」
「もっと、もっとだ……」
「ん、くぅ、や、あ、しず、……!」

 肩口に置かれた臨也の手は、縋るものにしては酷く弱々しい。おめでとう、静雄、と囁かれる言葉は、酷く甘やかで心地が良かった。





●1/29 01:38
 何度も何度も求め、すっかり疲弊し切った臨也を風呂に入れる。後処理と称してもう1Rとなったが、それでも臨也の体力が追い付かず意識を飛ばしてしまった。とりあえず臨也を寝かしつけて、それからゆっくり自分もシャワーを浴びる。
 濡れた髪をタオルで拭いながら寝室に戻ると、すぅ、と規則正しい寝息が聞こえてきてなんだか安心する。
 明日は……もう日付も変わっているから今日の話だが、とりあえず臨也と携帯を買いに行こう。それから、そうだな、とにかく二人で出掛けたい。池袋や新宿だと目立ってしまうから、もっと別の場所に行こう。誕生日の思い出が追いかけっこというのはあまりに味気ない。
 眠る臨也の額に、鼻に、頬に、口付ける。こいつの誕生日は5月だったか。さて、どんな要求をされることやら。まだ3ヶ月ちょっと先の話だ。それまでに、何か考えておこう。

(とりあえず今は、この愛情を抱き締めて。)









2011.01.29


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