●1/28 18:21
 いい加減面倒だと思いつつも、臨也の姿を見る度に怒りが湧き上がってきてどうしようもなかった。どうしてこんなに怒っているのかが既にわからないくらいだったが、とにかく臨也をひっ捕まえてどうにかしてやらないと気がすまなかった。
 途中で門田達や来良のガキ達にも会ったのだが、話をしている途中で必ず臨也が姿を現すものだから会話はすべて中途半端なまま終わっていた。
「ったく……何なんだよ今日はよ」
 普段だったら、臨也は俺の姿を見つけたらまず逃げる。一日のうちでそんなに何度も俺の前に自分から姿を現すことがあっただろうか。
 ごちゃごちゃし始めた頭の中を整理しようと煙草を取り出す。一本口に咥え、火をつけようとしたそのとき。
「もうおしまい?」
 ひょい、と口元から煙草が消える。臨也に奪われたのだと気付くまでに、時間が必要だった。



●1/28 19:08
 逃げる臨也の後ろ姿を追いながら、どんどん池袋から遠ざかっていくことには気づいていた。そして、向かう先がどうやら、臨也のマンションであることにも。
「おつかれさま、シズちゃん」
 にこにこと、臨也は本当に楽しそうに笑う。「これでゴールだ。今日ばかりは夜景の見える俺の部屋にご案内するとしよう」
 今日ばかりはってなんだ。日付を確認しようと思い携帯を取り出そうとするが、そういえば携帯は無残な姿になってしまっていたことを思い出した。まだ購入してから一年くらいしか経っていないというのに。そういえば、前の携帯が壊れたのもこれくらいの時期だった。確か、あの時も臨也からの電話に苛立ってしまったんだっけ。そして、次の日ずっと追いかけっこをして……。
「シズちゃん、あのね」
 ああ、そうだ。前の携帯が壊れたのは、ちょうど一年前だ。去年の一月二十八日。そう考えれば合点がいく。今日一日、臨也が俺の前に何度も姿を現した理由。
「……その、今日さ、」
 ああ本当、面倒くせえやつだな、こいつ。そんなことで毎年携帯電話を壊されては、こちらだってかなわない。
 だがしかし今はただ、回りくどいやり方しかできないこの男が、無性に可愛いと思えて仕方がなかった。







1月28日の憂欝

●1/28 12:56
「あれ、今日は静雄休みか?」
 昼休み、門田君がうちのクラスに顔をだしてそう言った。
「ああうん、たぶん臨也にちょっかいかけられてるんだと思うよ」
 僕のその言葉を聞いて、門田君は納得したようだった。
「そうか、今日だったな」
「臨也も健気だよねえ」
「……そうだな」
 あとひと月くらいで、私たちも卒業を迎える。さて、毎年のこの恒例行事は、卒業した後も続けられるのだろうか?
「あーあ、本当臨也ったら、素直じゃないよね」
「まったくだ」
 まあ、好きな人の誕生日を一緒に過ごしたい気持ちはわかるよ、少々回りくどいやり方だとは思うけどね。そう口にすると、まあ臨也らしいけどな、と呆れたように門田君も笑った。



2011.01.28
Happy birthday to Shizuo!


「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -